Monologue

2002年11月29日(金) レオリオの『目覚まし時計』日記 4

“お前は私と違って、寝起きは良いのかと思っていたぞ?”

『相方』は冷静沈着に淡々と言葉を紡ぐ。

“私と一緒に居た時も、むしろお前の方がいつも私を起こしてくれていたでは無いか?
それなのに、何故あの様な痴態を曝してしまったのかと私は考え・・・・・”

「っるせーな!別に良いじゃねぇかよ!!」

・・・・・と、

“『目覚まし時計』に追い掛けられて、街中をストリーキングしちゃった事件”を、
TVの『ワイド・ショー』でバッチリ観られちまったと云う気まずさから、
ついムキになって強い語調で返してしまう。

受話器の向こうで『相方』が微かに息を呑む気配を感じて、ハッと我に返る。

「あ、わりぃ」と詫びると、

“いや、私も少し言い過ぎてしまった様だ・・・・・・”

『相方』もすまなそうにポツリとそう答えた。


何だかガキみてぇだ・・・・・・俺。


ポリポリと右頬を掻きながら、
気を取り直して、俺は沈黙を破る言葉を懸命に探す。

「・・・・・・それよりも、お前ェこそ、ちゃんと一人で起きれてんのかよ?」

“あ、ああ・・・・・・まぁ何とか、な ”

やはり冷静な口調で『相方』はさらりと答える。

「そうか・・・・・・」

『ククルー・マウンテン』でキルアを救い出した後、
ほんの僅かの間だけ『相方』と一緒に暮らしていたあの頃、
低血圧の『相方』を起こすのに毎朝苦労した事を、ふと思い出す。

「そうだよな、
今朝だって、こうやってちゃんと早起き出来てんだもんな・・・・・・」


もう『相方』は、

『目覚まし時計』なんか無くても・・・・・

俺が起こしてなんかやらなくても・・・・・


“いや、私は別に早起きした訳では無いぞ ”

・・・・・・・・・と、

すっかりおセンチな気分に浸り切っていた俺に向かって『相方』は、きっぱりと言い切る。

“え?”と首を傾げながら、
 
「だって、現にこうやって起きてるじゃねぇか」

“いや・・・・・・”

そう言いながら『相方』は、
“ふわァ・・・”と眠そうな欠伸を一つすると、

“これから、寝る処なんだ・・・・・・”


・・・・・・・・・・・・・・・は?

『相方』の予想外の言葉に俺は耳を疑う。

「これから・・・って事は、お前今までずっと起きてたって事かよ?」

“ああ、そう云う事・・・・・・”

そう言いながら、また“ふわァァ・・・・・・”と欠伸をした後、

“『仕事』が・・・・・・なかなか片付か・・・なく・・・・・・て・・・・・・・”と言い掛けて、

また“ふわァァ・・・・”と、欠伸を繰り返す。

「『仕事』・・・・・・って、お前、今までずっと『仕事』してたのかよ?」

“ああ”と、
素気無い『相方』の答えを聴いて俺はいささか不安に駆られ、
思わず受話器に向かって声を荒げる。

「それって、まさか『労働基準法』に違反してねぇだろうな?
 お前、大丈夫なのかよ?」

“ああ・・・問題・・・無い・・・・全て・・・・・・・・”

“順調だ”と言い掛けたらしい『相方』の台詞は“ふわァァァ・・・・・・”と、
またまたまた欠伸に潰される。

何だか、聴いているこっちまで眠くなっちまいそうなのを堪えながら、

「ああ!もう良いから、さっさと寝ろよ!!
 仕事明けって事は、今日はもうゆっくり眠れるんだろ?」

“・・・・・・・・・・・こ・・せ・・・・”

「え?何だよ?」

眠くてむずかる子供の様に口の中でゴモゴモと喋る『相方』の言葉が
上手く聞き取れなくて耳を澄ますと、



“9・・・時・・・・・・なったら・・・・・起・・・こして・・・・く・・・・・・・”

まるでうわ言みたいに、
そう言い残すと同時に『相方』の電話は“プツッ”と切れた。

“ツーッ、ツーッ、ツーッ・・・・・・・・・・”と、無機質な不通音だけが聴こえる電話を切ると、
俺は“フーッ”と溜息を吐く。

9時になったら、って・・・・・たった2時間しか眠らねェつもりなのかよ?

『仕事』って・・・・・・一体、今何やってんだ?と、
次々と不安が沸き上がる胸の奥の片隅で、

(さぁ〜てvv何て言って起こしてやるかな?
“もう寝かせないぜベイビー♪”ってのはどうだ?)と、

不埒な考えをこっそり巡らせていた・・・・・・


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