Monologue

2002年10月07日(月) おれを励まさないでくれ

(『心が雨漏りする日には』の感想です。
かなり内容に触れておりますし、引用も多いので未読の方はご注意下さい)

先日、衝動買いしてしまった中島らもさんの新刊『心が雨漏りする日には』

最初は買うつもりは毛頭無く、呑気に文庫化を待つつもりだったのだが、
立ち読みしていた時に、思わず瞳を止めてしまった文が有った。

“おれを励まさないでくれ
 気分転換を強要しないでくれ
 放っておいてくれれば一人で治るから干渉しないでくれ”

これは鬱病に掛かったらもさんが奥様に出した注文だそうだ。

自分は鬱病と診断される程では無いが、
割と落ち込み易い性格なのでこの文章には深く肯いてしまった。

落ち込んでいる時は、
無理矢理すぐ元気になろうとしたりせず、とことん落ち込んだ方が良いらしい。
個人差は有ると思うが、少なくとも自分はそうだ。

ふむふむ……と肯きながら読み進めて行くと、更にこんな文章に行き当たる。

“『頑張れ』と励ましては行けない、と云う事はようやく世の中に浸透して来たようだ。
『頑張りたい』のは山々なのだ。
会社に行けないとか歩けないとか症状が出ている時点で、
もうポキッと折れてしまっているのだから、それ以上追い詰めないで欲しい。

『頑張れ』と言われると、
まだ頑張りが足りないのかと情けなくなったり腹立たしくなったりするのだ”(中略)

“とにかく干渉されたくない。
心配してもらっている事をありがたいと感じる余裕すら無いのだ”

この気持ちは判る、すごく良く判ると思ってしまった。

だが、
「じゃ、落ち込んでいる人は放っておけば良いのか」と云うと、実はそうでも無い。

“あれこれ干渉されてはイライラしてしまう。
けれど放っておかれると放っておかれたで、
どんどん孤立して、マイナスの方向に自分を追い込んでしまう。
だから完全に見放されるのはやはり困ってしまうそうなのだ”(中略)

“温かい感じで距離を置く、とでも言うのだろうか。
 おれの経験からするとこうしてもらうのが最もありがたい”

そう、そう、そうなんです〜!!らもさ〜ん(^^)

落ち込んでる時は基本的に放っておいて欲しいけれども、
そんな時に「頑張って下さいね♪」と云うメールや身近の人の励ましを頂くと、
自然に元気になれたりしてしまう事も多いのだ。

実を言うと、
この本を立ち読みした時、自分はメチャメチャに落ち込んでいた。

「自分を励まそう」とか「元気になりたい」と云う気持ちも有ったのだと思う。

それで、つい衝動買いしてしまったのだ。


この本はらもさん(^^)の半自叙伝だ。

“落ち込んだ時にはこうすると良い”と云う本は多いし、自分も良く読むが、
この本は、そんな解決法の提示の後、
“少なくともおれはそうだった”と書かれている処に惹かれる。


だが最後まで読み進めて行くと、
実はとんでもない目にらもさんが合っていた事実が書かれていて愕然とした。

事実は小説より奇なり……と云うが、
あまりにも酷過ぎる!!と腹立たしくなってしまった。

詳細は割愛させて頂くが、
良いお医者様に巡り会うのは難しいと云う事と薬は本当に怖いと痛感してしまった。

相変わらず感想を上手く書けないのが口惜しいが、この本は面白い(^^)

普通に読んでも良いし、
落ち込んでいる時、すぐには元気になれそうも無い時……

タイトル通り『心が雨漏りする日には』
あまり急いで修理しようとせず、盥でも置いて、
雨が止むのをのんびり待つのも悪くないかなぁ……みたいな気持ちにさせてくれる。


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