Monologue

2002年08月10日(土) 師匠の『俺の誕生日』日記(代筆ななか・2日遅れでゴメンナサイ)  

「キサマ、幾つだ?」

と、携帯電話の通話口の向こうから、
聴き覚えのある小生意気そうなボーイ・ソプラノが高飛車に俺に尋ねる。

3年振りに聴くヤツの声は妙に甲高くて、相変わらずあまり男臭さを感じさせない。
“声変わり”と云う生理現象もヤツの身体を素通りしちまったのか?……と、
俺は一人勝手に推測する。

それとも、ヤツは未だにガキのまんまでいるのか?

「幾つかと尋いているのだ!答えろ!!」
「……二つかな?」

は?……と、通話口の向こう側で
“俺の言葉の意味が判らない”と云ったニュアンスの息遣いが発せられるのが伝わる。

「何だ?コーヒーに入れる砂糖の数じゃねェのか?俺はてっきり……」

喉の奥からこみ上げる笑いを必死に抑えながら、
わざとすっとぼけた口調で答えてやると、

「バカ!!誰がコーヒーの話などしている?」
途端にムキになったかつての弟子……クラピカのヤツが列火の如く怒鳴る。

やっぱりヤツは未だにガキのまんまらしい。

「じゃあ何だ、靴のサイズか?」
ぐっ!とヤツが絶句する気配を感じる。

「……ただ“幾つだ?”って尋かれただけじゃ、
俺のスリーサイズが知りてぇェのか、ボーリングのアベレージが知りてェのか、
さっぱり判らんぞ」

受話器の向こうから、ヤツがギリギリと歯噛みする音が聴こえて来そうだ。
ガキをからかうのは本当に面白い(^^)

「すまなかった……私の説明不足だった様だ」

お?
珍しく殊勝な口調で言うじゃねェか。

コイツも世間の荒波に揉まれる内、
少しは年上に対する敬意とやらを身に付けたのだろうか?と一瞬考えたが、
油断は禁物だと、即座に己を戒める。

「私が知りたかったのはキサマの年齢なのだ……幾つだ?」
「俺の歳?41だが……あ!」
そこまで言って俺は、今日が8月8日で有る事を想い出す。

「……42になっちまったな、今日で……」

「判った」

そう答えた途端“ピッ!”と一方的に電話を切られた。

「何だ?一体……」

全く……
相変わらず自分のペースをち−とも崩さないヤツらしい。

ところで、
俺の年齢なんか尋いて、一体どうする気なんだ?ヤツは……

「そう云えば……」

ゴロンと寝転がってシミだらけの汚ねぇ天井を見つめながら、一人呟く。

「今日、誕生日だったっけな……俺……」


隠遁生活とやらをおっ始めてから、
祝う事も祝われる事からもすっかり縁遠くなっていた事に改めて気付いた。


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