(『恋鎖』より、ちょっと前のお話です)
“フンフンフン……”と、鼻歌を歌いながら、レオリオは鏡に向かっている。
先日、クラピカの翻訳の仕事の報酬が振り込まれたので、
今夜は久し振りに二人で一緒に豪華な食事をしよう!と云う事になったのだ。
ヒゲは剃ったし、ヘアスタイリングもバッチリ決めて、
ブルーのシャツに『勝負』ネクタイを合わせて
『タイピン(キャッツ・アイ付)』を付けようとした……が、
「おぉ……っと!!」
“コロ…ン…”と、
『タイピン(キャッツ・アイ付)』はレオリオの指を離れて落下し、
フローリング式の床の上をコロコロコロ……と転がった。
「レオリオ、仕度は出来たのか?」
“ガチャッ”とレオリオの部屋のドアを開けて、クラピカが小さい顔を覗かせた。
“ちゃんとオシャレしろよ!”とあれ程言い聞かせたにも関わらず、
やはり『いつものTシャツ』&『いつものGパン』で、さっさと身支度を終えてしまった様だ。
その彼の足元近くに、
転がり続けていた『タイピン(キャッツ・アイ付)がピタリと止まった。
「あ、悪ぃ、クラピカ……その『タイピン』拾ってくんねぇか?」
「……?」
レオリオに言われ、クラピカは床に視線を落とす……と、
“チャララ−−ン!!”
甲高い金属音が響き渡ったかと思うと、
突然クラピカの右手に鎖が出現した。
『滅する人差し指の鎖!!』
原作に登場してもいない『幻の必殺技』(富樫先生&皆様、スミマセン(涙))の
鋭利な切っ先が、
クラピカの足元の『タイピン』に付いていた『キャッツ・アイ』に見事命中した。
“ぱき……っ”
………レオリオは瞳の前で小気味良い音を立てて粉砕した
『キャッツ・アイ』の残骸の傍に駆け寄り、
「あ…あ……何すんだよ、てめぇ……!」
……と、 クラピカの顔に視線を移した途端、レオリオは思わず絶句した。
その両瞳は燃える様な緋赤色に変化し、
唇をキッと硬く引き結んだ鬼気迫る表情は見る者全ての背筋を凍らせる……
「ク……クラ、ピカ???」
震える声で名前を呼ばれ“ハッ!”と夢から覚めた様な表情になる……と、
自分の足元でレオリオの『タイピン』に付いていた『キャッツ・アイ』が
完膚無き迄に粉砕されているのに気付いた途端に、
「す、すまない……!!」
蒼褪めた頬と同様に瞳の色も青碧色に戻ったクラピカは慌てて足元に座り込み、
己の鎖で粉砕した宝玉の欠片を痛ましそうに拾い上げる。
「どうしちまったんだよ?一体……」
「……良く分からないのだ」
レオリオの問い掛けに対して、訳が分からないと云った表情で首を横に振ると、
「この宝石を瞳にした途端、 瞳の前が真っ赤になって……」
左のこめかみを指先で押さえながら、すまなそうに口篭もる。
「身体中が火みたいに熱くなって……気が付いたら……
……すまない、お前にとって、とても大事な品だったのだろう?」
レオリオは答え様として、ふと『ある事』を思い付く……
(まさか、こいつ…?)
「……弁償するぞ、幾らだ?」
“ハッ”と我に返ると、
「い、いや…いい!いらねぇよ!!……どうせ貰いもんだったしよ、気にすんな!」
ブンブン、と右掌を振ってみせる。
「それなら尚更だ……大切な人に貰った、想い出の品では無いのか?」
「ん……まぁ…そりゃそうだけど……」
(もう、あんまり『イイ想い出』じゃ無ェし、な……)
レオリオは右頬をポリポリと人差し指で掻きながら、空を見つめる。
「とにかく、もう気にすんな!な?」
クラピカの傍らに座り込むと、
『キャッツ・アイ』の欠片を拾い上げると『タイピン』の台座ごと、屑篭に放り込んだ。
「………ッ!!」
反射的に息を呑んだクラピカに、
「行こうぜ、もう時間無ェし……」
そう言いながら、ウインクしてみせる。
「給料入ったんだろ?……新しいの『プレゼント』してくれよv」
右掌でクラピカの左肩を抱きながら、耳元に唇を寄せて囁く。
「違う宝石に……してくれよ?」
(やはり思い付きだけで書いてはイカンです(大反省)
宝石だけに『玉砕』……なんちて(バキッ!))
大変失礼致しました(涙)懲りずにまた頑張ります(^^;)
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