| 2002年05月03日(金) |
文化祭(あまりに下品なので苦手な方はご遠慮下さい) |
「ったく……お前ら、二人とも手首が硬ぇんだよ!!
いいか?タコヤキってのはな、こうやって手首のスナップを利かせて返すのがコツなんだぜ、
判るか?」
と、言いながら、 2年生の番長レオリオは鉄板上の『タコヤキ』をくるくるくる……っと器用にひっくり返して行く。
その見事な手捌きに、1年生のゴンとキルアは“おーっ!”と感嘆の声を漏らす。
「すごいや!レオリオ!」 「やるじゃん、オッサン!」
「おぅ!ダテに5回も2年生やってねぇぜ!!」
「やるじゃないか……レオリオ」
突然、掛けられた声に3人が顔を上げると、 レオリオの担任教師であるクラピカが『タコヤキ』の模擬店の前に立っていた。
「あ!クラピカ先生!」
ゴンが嬉しそうに声を上げる。
「どうだ?繁盛しているか?」
クラピカが尋ねると、
「それが……」
言い難そうにゴンが俯く。
「だってよ、先生……コイツら、ち〜っとも上手くひっくり返せねェんだぜ! だからこの俺様が見るに見兼ねて……」
「しょうがないじゃん!!俺達『タコヤキ』焼くのなんて初めてなんだから!」
ゴンが顔を上げて叫ぶと、
「そうそう……オッサンみてぇに年季入ってねぇからさ」
「あんだと……コラァ?」
キルアの冷静沈着な言い方がレオリオの勘に障り、屋台内の空気がピリ…ッ!と緊張する。
「よさないか!3人とも!!」
凛としたクラピカの一喝で、3人は素直に押し黙った。
「………美味しそうだな」
クラピカの言葉にションボリと項垂れていた3人は“パッ”と顔を上げる。
「私にも一皿くれないか?……『タコヤキ』」
クラピカが微笑ってそう言うと、
「おぅ!合点だ!!」
俄然張り切り出したレオリオは、額の捩り鉢巻をキュッ!と絞め直して、
焼き上がった『タコヤキ』をポンポンと皿に乗せて行く。
「ほらよ!ゴン!頼むぜ!」
言われて渡された『タコヤキ』の皿にゴンはペタペタとソースを塗り、 『マヨネーズ』をタ〜ップリと捻り出す。
「はい!クラピカ先生には『マヨネーズ』大盛り♪ 熱い内に食べてねv」
「ありがとう、ゴン」
『タコヤキ』を受け取りながら、クラピカは花のように穏やかに微笑み返す。
「で、幾らだ?」
「カネなんていらねーよ……俺のおごりだ♪」
ニコニコ微笑って答えたレオリオに向かって、
「てめぇ!俺らの屋台で勝手な事すんなよな!!」
命知らずに突っ掛かったキルアの脳天にはレオリオの鉄拳が容赦無く打ち込まれていた。
「いいのか?本当に……」 「ああ、気にすんな」
レオリオは平然と答える。
「ッ痛ェ〜〜〜!」 「いいじゃん、キルア……クラピカ先生なんだしさ……」
殴られた頭を押さえて顔を顰めているキルアを宥める様にゴンが言う。
「ではお言葉に甘えて……有り難く頂戴するぞ」
クラピカは『タコヤキ』の一つに爪楊枝をぷすり…と突き刺して、 ゛あ〜ん……゛と円く開いた唇に運んだ。
僅かに開いた唇の隙間から、伸ばされるピンク色の舌先がちろりと覗いて…… 思わずレオリオは、ゾク…ッとした。
゛ぱく…ん゛と、 『タコヤキ』を口に含み、味わう………柔らかそうな彼の唇……
「うん……美味いぞ!」
満足そうなクラピカの言葉に、
「やったぁ!良かったね!レオリオ!」
嬉しそうにゴンが声を上げたが、
「あ、ああ……」
レオリオはクラピカを呆然と見つめたまま……だった。
「お前ら…… 後は、二人で頑張れよ」
捩り鉢巻と前掛けを外すと、そう言い残し、レオリオは屋台の外に出た。
「なぁクラピカ先生…… 俺の『フランクフルト』も喰わねェ?」
『タコヤキ』をパクついているクラピカの傍らに歩み寄り、小声で耳打ちする。
「何だ?レオリオ……お前、『フランクフルト』の模擬店も出していたのか?」
「ああ、年中無休……っと、と!」
レオリオは慌てて口篭もる。
「すまないが……生憎『タコヤキ』だけでお腹いっぱいだ」
苦笑しながら答えるクラピカに向かって、
「まぁそう言わず……良いじゃねぇか、一本位……な?」
「………しょうがないな」
レオリオがあまりに熱心なので、クラピカは仕方無く肯く。
「じゃ、行こうぜv」
と、クラピカの右肩に腕を廻し、抱いた右腕に軽くグイッと力を込めて促す。
「そ、そんなに急がなくても良いでは無いか。 この『タコヤキ』を食べ終わってからでも……」
ふと、気付いて周囲を見廻すと、
クラピカが連れて来られた体育館の裏の茂みには、
『模擬店』処か………人の気配すら全く無い。
レオリオはクラピカの耳元に唇を寄せて、そっと囁いた。
「俺のも・……
“熱〜い”うちに食べて欲しいんだよ……な?先生……」
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