Monologue

2002年03月16日(土) 最終日

“フゥ・・・・・・・”

クラピカは岩造りの露天風呂に浸かりながら溜息を吐く。

(『修学旅行』も明日で終わり・・・何事も無くて本当に良かった)

あの生徒に『食べ』られてしまう事も無く・・・・


他の教師達は皆酒を飲んでいる(まだ7時半だと言うのに!)

自分はまだ未成年だし、元々あまり酒を呑んで騒ぐのは好きでは無いので、
一足先に入浴させて貰った。

浴場にはクラピカ一人だけ。

こうして誰にも気兼ね無く手足を伸ばして湯に浸かっていると、
心の中まで温かく癒されて行く様だ・・・・

(さて、そろそろ上がるか・・・)


そう思って立ちあがった時、

“カシャ・・・ッ!”

微かな音がして、クラピカは辺りを見回した。

だが、人の気配は感じられない。

(気の所為か・・・・)




バスタオルで身体を拭いて浴衣を着け“ガラッ”と扉を開けると、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」

クラピカは言葉を失った。

「よっ!先生!」

彼のクラスの生徒で有り、二年生の番長を勤めるレオリオがクラピカと同じ浴衣に身を包み、ラケットを持って立っている。

「卓球やろうぜ♪先生」

「な・・・何でお前が此処に居るのだ!此処は教師用の風呂だぞ!」

震えながら人差し指を向けて叫ぶ。

「しょうがねぇだろ?ココしか卓球台ねぇんだからよ・・・・

 それとも・・・・先生、卓球出来ねぇの?」

“カッ・・・!”と、大きな瞳を見開いて、レオリオが手にしていたラケットの一つを奪い取ると、

「いつかはこんな日が来るのでは無いかと思っていた・・・・この日の為に3年間、
山にこもって・・・・(中略)」

ブツブツ呟きながら、卓球台の前に立った。

「行くぞ!レオリオ!」

「おう!望む処だ!」


二人の腕は、ほぼ互角。

「やるじゃねぇか!」

「お前こそな!」

ラリーばかりが続いて、なかなか勝負が着かない・・・・


「なぁ・・・・先生」

“コン・・・”と、レオリオの言葉と共に放たれる球・・・・

「何だ?」

“コン・・・”と、打ち返す。

「何で、俺の事避けんの?」



“コン・・・”と、卓球台を跳ねあがった球が、そのまま床に落ちて転がるのを、

クラピカは立ち尽くしたまま茫然と眺めていた・・・・





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