“フゥ・・・・・・・”
クラピカは岩造りの露天風呂に浸かりながら溜息を吐く。
(『修学旅行』も明日で終わり・・・何事も無くて本当に良かった)
あの生徒に『食べ』られてしまう事も無く・・・・
他の教師達は皆酒を飲んでいる(まだ7時半だと言うのに!)
自分はまだ未成年だし、元々あまり酒を呑んで騒ぐのは好きでは無いので、 一足先に入浴させて貰った。
浴場にはクラピカ一人だけ。
こうして誰にも気兼ね無く手足を伸ばして湯に浸かっていると、 心の中まで温かく癒されて行く様だ・・・・
(さて、そろそろ上がるか・・・)
そう思って立ちあがった時、
“カシャ・・・ッ!”
微かな音がして、クラピカは辺りを見回した。
だが、人の気配は感じられない。
(気の所為か・・・・)
バスタオルで身体を拭いて浴衣を着け“ガラッ”と扉を開けると、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
クラピカは言葉を失った。
「よっ!先生!」
彼のクラスの生徒で有り、二年生の番長を勤めるレオリオがクラピカと同じ浴衣に身を包み、ラケットを持って立っている。
「卓球やろうぜ♪先生」
「な・・・何でお前が此処に居るのだ!此処は教師用の風呂だぞ!」
震えながら人差し指を向けて叫ぶ。
「しょうがねぇだろ?ココしか卓球台ねぇんだからよ・・・・
それとも・・・・先生、卓球出来ねぇの?」
“カッ・・・!”と、大きな瞳を見開いて、レオリオが手にしていたラケットの一つを奪い取ると、
「いつかはこんな日が来るのでは無いかと思っていた・・・・この日の為に3年間、 山にこもって・・・・(中略)」
ブツブツ呟きながら、卓球台の前に立った。
「行くぞ!レオリオ!」
「おう!望む処だ!」
二人の腕は、ほぼ互角。
「やるじゃねぇか!」
「お前こそな!」
ラリーばかりが続いて、なかなか勝負が着かない・・・・
「なぁ・・・・先生」
“コン・・・”と、レオリオの言葉と共に放たれる球・・・・
「何だ?」
“コン・・・”と、打ち返す。
「何で、俺の事避けんの?」
“コン・・・”と、卓球台を跳ねあがった球が、そのまま床に落ちて転がるのを、
クラピカは立ち尽くしたまま茫然と眺めていた・・・・
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