白木蓮の咲く庭で...久純ゆきの

 

 

『ケルトの女神伝説』 - 2006年06月04日(日)

風は止んでいた。
真夜中頃には煩いほど鳴っていた浜薄の夏穂の群れも、今は静かだ。
一斉に首を項垂れて時を待っているのだろう。
天頂を通過した月が背後の地平へと姿を隠して久しく、
僅かな星明りのみでは世界を照らしきれない。
遠く、どこまでも凪いだ海面の暗黒が、
全てを吸い込もうとでもするかのようにそこに在った。
彼はただ黙って、海と境界を失った空とを見つめていた。
握り締めた短剣ごと左手を胸に当てたまま。

暗がりの中では判然としないが、短剣の鞘や柄に精緻な細工が施されていた。
握る手に痛いほどの装飾は、
この剣が実用的な用途で作られたものでないことを示している。
幼い頃から常に身に帯び続けたために、
彼は、例え見えなくてもその細工について詳細に述べることが出来た。

鞘には、天を目指し駆け上る竜とそれを迎える太陽神。
竜は海から昇り、その尾は未だ海の中。
尾の先は鍔の中央に飾られた薄紫の玉へと連なる。
竜が生んだ波は風を呼び、鞘の裏側で解き放たれた風の乙女たちが踊る。
神話の一場面をモチーフにしたものだ。

一方、柄の方には絡みつく蔓薔薇を模した細工。
白金らしき色合いの蔓が鍔の中央の玉から何本も生い、
繊細な曲線を描きながら柄頭へと伸びてゆき、
先端で薄紫の玉の花を咲かせている。

脳裏に短剣の姿を思い描いていた彼の思考を裂くように、
軽い足音が背後から近づいてきた。
かすかな衣擦れの音は、上等の布地でなければ生み出せない類のものだ。

「アゼル様、もう間もなく頃合です」
「分かった」

彼の予想に違わず、話しかけてきたのは女司祭だった。
岬を守る神殿から使わされる巫女は、
儀式で時を告げる役目を負う。
振り返ってありがとうと告げると、彼女は目礼を返してきた。
被った薄物のヴェールが優雅に舞う。

彼女の背の向こう、心配そうな表情でこちらを見守っている守役に
短剣を握らぬ方の手を掲げて合図を送る。
安心させるように微笑んでは見せたけれど、
果たして彼の目には分かっただろうか。

アゼルはゆっくりと歩き出した。
碌に辺りを見通せぬ暗闇の中でも、夜目の利く彼は十分に行動できる。
浜薄の群生を出来る限り踏まぬように抜け、
海へと張り出した崖の先端を目指す。
普段なら聞こえるだろう、岩肌に波がぶつかる音も今は全くしない。

無音を喜ぶ朝の凪。

古から伝えられる儀式の光景に違いない。
だから彼は、迷うことなく道をたどることが出来た。
頭は真っ直ぐ、視線は正面に据える。

水平線は、今や一層暗さを増したように見えた。
夜明け前が一番暗いとは何の書物で読んだ言葉だったか。
アゼルの脳裏に浮かんだのはそんなことだった。
きっともっと緊張するのだろうと思っていたのだけれど、
海と同じように不思議なほど心中は凪いでいた。
赤土の地面を踏む、彼自身のブーツの足音だけが鈍く小さく時を刻む。

やがて崖の先端へとたどり着くとアゼルは足を止めた。
ゆっくりと瞬いて、息を吐く。
空がかすかに紫味を帯びたように見えた。
と思う間に、白金の輝きが水平線の向こうに姿を現す。
暗黒の淵だった海が、途端に一面の鏡となった。
目を射るようなその痛烈な輝きを顔を顰めながら見つめ返す。

(……――未だ、あともう暫く)

脳裏に響いたのは、誰の声だったか。

繰り返し習い覚えた儀式の手順。
それは教師から教えられていたし、
祖父や父の昔語りに幾度も聞いた。
乳母にせがんだアゼル気に入りの昔話にも出てきたし、
今宵の始まり、儀式の出立に際して、神殿の老司祭からも語られた。
その誰の声でもあって、誰のものでもないと思える声。

『太陽が姿を見せる前までに岬の先端に立ち、
 全て現すと同時に剣を海へ捧げなさい。
 汝認められれば、太陽は竜を空へ迎え入れるでしょう』

脳裏に響く声に従って時を待つ。
日を映す鏡が一際その輝きを増した瞬間、
アゼルはそれまで確りと握りしめていた短剣を海へ向かって投げ放った。


**


どうも皆様こんばんは。
こんばんはじゃない方は、おはようございます及びこんにちはに
自動変換をお願いします。


というわけで、女神の欠片もない文章で
「どの辺が『ケルトの女神伝説』なのか説明しなさい」と言われそうです。
が、これはまぎれもなくケルトの女神伝説なのです。

……多分続くので。明日に。

いや、今度こそ続きます。
だって、本当に書きたいシーンがまだ来てないんだもーん。

そのシーンこそケルトの女神伝説なのですよ。

というわけで、解説は明日ーっ。


何でこんなことしてるかと言うと、
ちょっと気合入れて文章の書き方思い出そうかと思って。


今日一日想像で遊んでたら、
全然卒業しない卒業になっちゃって困ったアリスでした。

アリスパパがえっらい美味しいヒトになっちゃって……。
アリスパパのためにそっちにしてもいいかなと
ぐらついている今日この頃。
ちなみにそのルートだと、アリスママが泣きます(笑)

ちなみにアリスパパはリャノのひとです。
アリスママは前世(?)と同じくサリカのひとです。

パパは船の船長さんです。
ママは船医さんです。
ママはアリスをサリカにしたかったけれど、
アリスはどう頑張ってもパパ系の性格でした。
パパはお船系のリャノで、
アリスはシャストアと提携してる芸術系のリャノなんですけどね。
好奇心はきっとパパ譲りに違いない!

……ところで、アリスのデータどこやったかなぁ……(困)


...



 

 

 

 

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