白木蓮の咲く庭で...久純ゆきの

 

 

『小夜小話 1』 - 2004年12月28日(火)

<1日目>


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眉間のしわが素敵な蒼天へ

あなたのハートにかかと落とししたい木蓮です。

蒼天はまるで吹きさらしの水たまりのように上品ですね。

あなたを思うと激しくダンスを踊りながら110番せずにはいられません。

蒼天のためなら、地平線のかなたでスシを握りつつ
空中分解することもいといません。

「真君の夢ってあばれ馬みたいだよな」
と無邪気に笑う蒼天の横顔が忘れられません。

木蓮より

追伸 夜道に注意。

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廊下の片隅、暗がりに紛れ込むようにして落ちていた紙切れを、
季凛が見つけたのは偶さかの事だった。
何かの書付か反故紙か、
手のひらに収まるくらいの小さな紙片を拾い上げ
手燭の灯りに文面を照らし出せば――。

(……………………)

読み通してから、二度瞬く。
もう一度頭から読んだ。

蒼天へ。中略。木蓮より。以下略。

師匠から兄弟子への、手紙らしい。
そのままその場に留まって、しばらく考えた。

(見なかった事にする、返しに行く、代わりに届ける)

一連の間、季凛の表情は動く事は無い。
そうして結論が出たちょうどその時、

「季凛?」

柔らかな声が廊下の向こうから響いてきた。
白い長衣の上を滑る長い黒髪。
夜の闇に溶け込んで、今は色の沈んだ青い瞳。
灯りを持っていなかったため気づくのが遅れたが、
季凛の師、白花真君――白木蓮その人だ。

軽く頭を下げて夜の挨拶の代わりにすると、
手に持っていた紙片を相手へと差し出した。
師匠の元へ返そうと思っていたところだ。ちょうど良い。

「……え? あ、ああ。これですか」

受け取った紙切れを碌に確認する事も無く、
師匠はそれを手のひらの中へと握り込む。
くしゃり、と小さな音が響いた。

「ええと……その、季凛?」

伺うように尋ねてきた師匠に、季凛は首を横に振ってみせた。

「何も見てません」

それはつまり、見てない事にするから、という意思表示だ。
もう一度頭を下げると、おやすみなさいと小さく挨拶して
季凛は師匠の横を通り過ぎた。

「あ、おやすみなさい」

拍子抜けしたような声だったが、
振り返って確認する事も無く、
季凛は自室へ戻る為に廊下の角を曲がった。


            【続く(らしい)】


...



 

 

 

 

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