『小夜小話 2』 - 2004年12月29日(水) <2日目> ******************* 量産タイプの真君へ 真君のハートをメッタ刺ししたい蒼天だ。 真君はまるで蒸し焼きの水たまりのようにしおらしいよな! 真君を思うとトラウマになるほど署名活動したくなる。 真君のためなら、地平線のかなたで目薬を指しつつ 羊を飼うことも朝飯前さ。 「蒼天の眼差しって足払いみたいですね」 と無邪気に笑う真君の横顔が忘れられない。 蒼天より 追伸 腐っても鯛 ……って言うけど、腐ったら食えないから別物だよな、普通。 ******************* 「………………」 それは、居間の机の上に置かれていた一枚の薄様だった。 墨が乾ききっていないところから見るに、 まだ書かれて間もないのだろう。 脇には数枚の白紙と硯。 太さの違う筆が2本、散らばっている。 それから反古紙を丸めたらしいものが、二つ三つと床に落ちていた。 ため息をつきながら床のゴミを片付けようと近づいたところで、 その文面が目に入ってしまった。 ……正直に言えば、昨夜のことがあったものだから、 つい中身が気になってしまったのだ。 しかし相変わらず、季凛の表情は動かなかった。 ぱちぱち。二度瞬くところは、昨夜と同じ。 窓から入ってくる午後の柔らかな日差しと、囀る鳥の声。 それから庭に実る桃の香り。 微風が優しく通り過ぎていった。 落ち着いた調度で品良く飾られた居間に、 濃褐色の髪を綺麗に結い上げた少年が一人、佇む。 後れ毛が揺れてその白い頬をくすぐった。 時が止まった掛け軸の絵画のようなその美しい光景を動かしたのは、 「よっ……と。お?」 窓から居間に飛び込んできた少年だった。 身軽な動作で窓枠を乗り越えると、 たんっと軽い音を立てて居間の床に着地する。 その金髪がきらきらと舞った。 季凛はゆっくりと振り返る。 金髪に青い瞳の、季凛と同い年くらいの少年。 この手紙(?)の書き手、季凛の、立場的には兄弟子に当たる司蒼天だ。 両袖を肩口で破った上着に、動きやすいように踝で両裾を括った下衣。 腰に結んだ臙脂と海老茶の飾り布が目に鮮やかだ。 「ととと、あ、こっから入ったの、真君には内緒な?」 視線が合うと、蒼天はにかっと笑った。 一方季凛の方はといえば、ちらとも表情は揺るがない。 ごくごく真面目な面持ちで、蒼天と向かい合った。 「蒼天」 「ん?」 呼びかけてから、おもむろに机の上の書面を指差した。 「文章の頭、真君を4度も繰り返すのは、あまり綺麗な表現じゃないと思う」 季凛にしてはめずらしく長々とそう告げると、 一拍置いてから床に屈み、反古紙を拾い上げた。 それから。 「じゃ」 短く言ってくるりと背を向けると、蒼天を置いて居間を後にした。 「……ああ、ええっと……」 振り返ったりはしなかったから、 残された蒼天がポリポリとこめかみを掻いていた事は知らない。 【(またも)続く(らしい)】 ...
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