Deckard's Movie Diary
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2007年05月29日(火)  パッチギ!LOVE&PEACE

前作の出来が良く、ヒットしたからと言って“パッチギ!”の名前は使わなくても良かったんじゃないでしょうか?はっきり言って「やっちゃいました!」作品です。まぁ、予想は出来ましたが、1作目とは比べ様もありません。前作は大人達が作った暗黙の了解事項や、仕方無いよ的ルールを“青春”という誰もが一度は迎える季節を背景に“一途な想い”という武器で突破するところに魅力があり、多くの人々の涙腺を刺激したとワケです(子供の無邪気さや、若者の真っ直ぐな気持ちが大人の世界を凌駕するのは文学や映画の世界では度々描かれ、それは人々の共感を得る定番だったりします)。1作目は1968年という時代背景もストーリーの中に巧みに組み入れられていたので、自然と当時の状況を感じることが出来ました。

さて、今作ですが、井筒監督は前作が何故に高い評価をされ、多くの観客に受け入れられたか全く分かってないんじゃないでしょうか?まぁ、そんなコトは無いでしょうけど、今回は明らかにまとまりに欠けています。スポーツ解説者ならば「好調時はスムーズで流れるようなフォームなんですが、今は力んでますねぇ・・・力が入りすぎているのでフォームがバラバラですよ。」と話すところです。在日の話に固執するあまり、描かれる様々なエピソードがバラバラで大きなストーリーとして昇華していません。在日の方々が大変な苦労をして生きて来られたことは分かりますが、それと“人が生きていく”コトとは別の話です。つまり、日本人だろうが、在日だろうが、アラブ人であろうが、ユダヤ人であろうが、それでも生きていく!ことは同じです。前作では、そんな人種間の枠を越えた人間賛歌を描いて見せたのに、なんでこうなるの?せっかく難病や孤児のサイドストーリーがあるのに、全く生かされていません(藤井隆演じる日本人の扱いもストーリー上の御都合主義だけで存在感がありません。穿った見方をするなら、日本人向けのガス抜きのような存在です。)。こういう描き方なら戦争と在日の関係にストーリーを絞った方が良かったんじゃないでしょうか?また、時代を描くための歌や流行語等の扱いもワザとらしく、ちょっと閉口しました。

『パッチギ!』は素晴らしい作品でしたが、『パッチギ!LOVE&PEACE』は傑作とは言い難い作品でした。“生きる”というコトに焦点を当てたのは良かったのですが、だったら『明石家さんま@ザワワ』の方がよっぽど出来が良いです。井筒監督は決して大作系の監督ではないと思います。大作に挑戦したい気持ちは分かりますが、今作を見る限り、やはり自分の得意範疇で仕事をした方が良いんじゃないでしょうか?今作を作っている最中にケン・ローチの傑作『麦の穂をゆらす風』を観て力が入っていましたが、逆に良くなかったのかもしれません。貴方は貴方のするべき仕事があります。次作に期待します。でも『パッチギ!3』だけは止めてね!


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