Deckard's Movie Diary
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| 2007年06月05日(火) |
大日本人 あるスキャンダルの覚書き |
松本人志は「何の映画にも毒されていませんし、誰からも影響を受けていません!」と豪語していましたが、確かにその言葉は納得出来る作品でした。個人的には松本人志という人間が持っているセンスは好きですし、彼が様々なメディアで発表して来た作品やパフォーマンスには少なからず接して来ました。そんなオイラですから、映画が始まってからは、例によって松本レトリックが展開され、クスクス、ニヤニヤの連続だったのですが、それでもやっぱりダメでした(苦笑)。元々『オジンガーZ』『ゴレンジャイ』『エキセントリック少年ボーイ』等、ヒーローをモチーフにしたコントが多い松本人志ですので、その延長線上の作品なのは間違いありません。また『頭頭(トウズ)』というビデオ作品があるのですが、その辺りも被っています。ストーリーはとても興味深く、その発想はさすが!と思わせてくれますが、結局はバラエティ番組での大掛かりなコントの域を出ていません。まぁ、風刺劇とも取れますが、ラストはもうちょっとキチンと作って欲しかったなぁ・・・そうすれば、かなりのカルト・ムービーになったような気もします。あのラストの前まではけっこう評価高かったんですけどねぇ・・・。オイラのような松本人志大好き人間が観て、この程度の反応なんですから、そうじゃない人が観たら怒るんじゃないでしょうか。とりあえず、人には勧めません(苦笑)。
ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットが凄いです(当ったり前の感想ですね)。火花散らす演技合戦とか言うんじゃなくて、それぞれの役柄を存在感タップリに演じてみせてます。ジュディは顔に深く刻まれた皺の一本一本までを“醜女の行かず後家”として晒して見せますし、ケイトはいつまでも可愛く美しい女を魅力タップリに披露してくれます。ちょっとした眉や唇の動き、時に輝き、くすみ、怯え、そして希望を湛えた瞳。二人の立ち振る舞いの全て、その一挙手一投足が観客を魅了します。ジュディの独白から始まり、ジュディの誘い文句で終わるコンパクトにまとまった92分!それはまるで『あるスキャンダルの覚え書き』というアトラクション内をゆるやかに走るコースターに乗った気分です。心の奥底に潜む、決して口に出してはいけない台詞の数々は胸を鷲づかみにしますし、例えフィリップ・リフレインが叫んでる・グラスの音楽の音量が大き過ぎたとしても、彼の作り出したいつもの旋律が観る者の不安をかき立て、この映画の世界に強引に引っ張り込んでいるのは間違いありません。
というワケで、とてもシンプルにまとまった佳作です。が、それ以上ではありません。観て損はありませんし、女優二人の演技も見応え十分ですが、何処か物足りない印象が残ります。理由は・・・秀才が計算通りに作った作品というか、平均80点以上の答案用紙ばかり並んでいて、良い意味での破綻がありません。5教科で80×5=400点を取った奴より、3教科で300点、2教科で100点で計400点を取った奴の方が魅力的なのと同じです(本当かよ!)。なんだか誉めているんだか、貶しているんだか分からない感想になりましたが、個人的には好きな作品です。
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