Deckard's Movie Diary
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2004年03月10日(水)  赤目四十八瀧心中未遂

2003年度キネマ旬報ベストテンで2位にランクされた『赤目四十八瀧心中未遂』。昨年は中野だけでの上映だったのですが、各映画賞を受賞した結果、今回晴れて新宿で公開となりました。まず最初に言っておきますが、原作は読んだ事はありません。で、この作品ですが、何処がそんなに評価されるんでしょうか?全くわかりませんでした。ブツ切りのエピソードが積み重なっただけのダラダラと長い作品以外のナニモノでもありませんでした。映画は何を撮るか?ではなく、何を描くか?だと思うのです。荒戸源次郎はプロデューサーとしては優秀なのかもしれませんが、監督としては明らかに力量不足です。例えば主人公の生島です。彼は来る日も来る日も臓物に串を刺し続けているのですが、ただ写しているだけなのです。もっと“刺す!”という行為に迫れば彼の心情(死んだように生きているが、自分でも気がつかないところで心の奥底の火は消えていない)を映し出す事が出来たはずです。またヒロインの綾との刹那の関係も唐突な印象なので、心中に向かう二人の居心地がとても悪いです。それは二人の関係をセリフに頼っているからだと思います。セリフで語らせるのは簡単ですが、人間の生理の部分を如何にフィルムに蒸着させるか!映像で描いてこそ“映画”と言えるのではないでしょうか?往年の今村だったり、神代だったり、田中だったり、実相寺だったらこんな愚鈍な演出はしないでしょう。例えば生肉を口にするような、気狂いと紙一重の生命力を一瞬でも感じさせて欲しかった気もします。ロマンポルノ全盛期や元気だった頃のATGを知っている人間には物足りない作品だと思うのですが、それらの映画を圧倒的に評価してきたキネマ旬報が、この映画をそこまで評価するというのは悲しい気もします。やはりキネマ旬報は既に終わっているのかもしれませんね(気づくのが遅いよ(苦笑))。寺島しのぶは明らかに『ヴァイブレータ』のが輝いています。生島を演じる新人の大西滝次郎は眼力だけが頼りの芝居で話になりません。『赤目四十八瀧心中未遂』は70年代邦画へのオマージュは感じられますが、チンケな模倣でしかありませんでした(ちょっと言い過ぎ(苦笑))。


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