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Deckard's Movie Diary index|past|will
望遠レンズを使ったラストシーン等、キチンとした映画文法を踏襲して印象的なシーン作っていた『青の炎』。演劇だけではない、演出家としての面目を保った前作から間を置かず公開された蜷川の新作『嗤う伊右衛門』です。冒頭、行燈の不安定な灯りだけで見せる蚊帳を挟んでのシーン。間の取り方が巧みなので妖しい緊張感が画面に漂います。明らかに力のある演出家の仕事です。セットとロケのバランスも悪くありません。今回は演劇的な演出が全面に押し出されており、『青の炎』で見せたような心理描写よりは、決り事としての演出が狙いなようです。全体を貫いている演出家の狙いは良く分かります・・・が、しか〜し!お岩を演じる小雪は立ち振る舞いは悪くないのですが、セリフ回しが圧倒的に弱く、同じようにお梅を演じる松尾玲央も無駄な脱ぎっぷりは認めるとしても演技はトホホです。主演の唐沢は思ったよりは良かったのですが、どちらにせよ登場人物が身体から発する怨念というか、情念というか、毒としての狂気が感じられません。だから、ちっとも恨めしくありません。これは致命的です。映画は芝居と違い、人間の目で見る身体全体を使った演技よりもレンズを通して見せる表情や、その人物がフィルム上に漂わすオーラが大事です。浄瑠璃や演劇の様式美を映画芸術の絶品として昇華させた『心中天網島』の狂気とは比べようもありません。また、池内博之のエピソードはともかく、香川照之の話は全く無意味でした。ところどころの時間の飛びもスムーズさに欠けていますし、この辺りの脚本(筒井ともみ)の出来の悪さも気になりました。映画は途中で幕は降りませんし・・・(笑)ラストは大苦笑モノでしたΣ( ̄□ ̄;) それでも蜷川の次回作に期待しているオレって・・・(>_<)アチャ!
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