Deckard's Movie Diary
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2003年08月21日(木)  英雄(ヒーロー)

予告編から容易に想像出来る映像は言うまでもなく、美術、小道具、群集シーン、登場人物の立ち振る舞い、そしてストーリー&ストーリーテリングの全てが華麗で優雅で惚れ惚れするほど美しい!この映画ほど、何の臆面も無く堂々と「後世に残る傑作です!」と言える作品も珍しいのではないでしょうか?言うなれば無駄な脂肪が一切付いてない、真に美しい女性の肉体(芸術的な意味です。)を眺めているような印象です。ちょっと眠気眼で上映を迎えたのですが、滴が舞い落ちるドニー・イェンとジェット・リーの殺陣を観ただけで眠気はブッ飛びました。緊張感溢れる間合いから生み出される優美で鋭角なアクションもまた、あくまで美しくスマートに完結します。黒澤の影響は見え隠れしますが、十分に消化されているので全く違和感無く『英雄』の世界に溶け込んでいます。『グリーン・ディステニー』に似ているという音楽も、『グリーン・ディステニー』より映画として魅力的な分、素敵に感じましたし、SE(サウンド・エフェクト)の素晴らしさも特筆すべきモノです。あまりに広告的!とも言える計算されたヴィジュアルの連続は、例えば“汗”の一滴をも流さないアクションに代表されるように、観る人によっては「なんじゃこりゃ!」という印象を残すと思いますが、映像芸術の一つの到達点と言っても過言ではないでしょう。古くは篠田正浩の『心中天網島』に観られた究極の様式美とも言える、観客の前に広がる圧倒的な映像世界。そして、美しすぎる映像に抱かれたストーリーはギリシャ神話を思わせ、骨太でまさにナタの切れ味!個人的には非常に洗練された超自然世界の寓話を観たような気分です。結果的に不満足であったとしても観るべき映画である!と言えるでしょう。もちろん、映画館で御覧下さい!ちょっと褒めすぎ?だって、好きなんだも〜ん!不満が残るとすればドニー・イェンが最初にしか出て来ないところかなぁ・・・・ボソ。

※ カメラマンにクレジットされているのはクリストファー・ドイルですが、この映画の映像のセンスはまさにチョン・イーモウ!この二人はどういう風に交わっていったのか非常に興味がありますが、映画同様“藪の中”かもしれません。唯一わかるコトは“マギー・チャン”を一番美しく撮れるカメラマンはドイル!ってコトですね。(おちょう〜しさんとのヤリトリから推測しています)


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