Deckard's Movie Diary
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2003年03月18日(火)  青の炎 卒業

 さて久々の邦画です。まずは『魔性の夏 四谷怪談より』でヘッポコ映画監督の烙印を押された演劇界の重鎮・蜷川幸雄の21年ぶりの灰皿の代わりにメガホンを取った『青の炎』。主演はジャニーズ・ジュニアの二宮和也、共演は松浦亜弥に鈴木杏。原作は『黒い家』等のホラー小説で名を上げた貴志祐介。演出は悪くないです。非常に分かり易く、緻密で的確。青いフットライトの中、殻に閉じ篭るように水槽に横たわる主人公、また、その水槽越しに二人の指が触れ合う場面等、さすがに演劇界のトップランナーだけあって印象的なシーンを作り上げるのが上手いようです。原作では「義父殺し−17才の少年の完全犯罪」という話なんだそうですが、映画からは“完全犯罪”というより少年の純粋な心模様にスポットが当てられていたようでした。どちらにせよ、途中から話の展開がそこら辺に転がっているサスペンス風になってしまうので、あらら〜となってしまうんですけどね(苦笑)前半部の主人公の心理変化などはけっこうイイ感じでしたし、もっとその辺りの脚本を練っていけば現代におけるひ弱な『青春の殺人者』として秀作が出来上がったような気がしてなりません。結局は“完全犯罪”という設定を棄て切れなかった為に(原作に忠実?)、中途半端な仕上がりになってしまいました。山本寛斎扮する義父の死に様が良かっただけに惜しまれます(苦笑)二宮は、セリフは下手ですが存在感はありました。松浦はTVドラマで観た時の透明感と全く一緒でしたが、今は貴重なオーラなのかもしれません。ラスト、風に押し出されるように消えていくシーンも印象的。ラストのラストは余計だけど(笑)

 続きましてぇ〜!予告編で鈴木博の『THE WAY WE ARE』が心地良かった『卒業』。監督は長澤雅彦。最近の邦画では珍しく“間”を活かした演出が出来る監督ですが、今回はただただ増長になってしまいました。その原因は、とにかく話が面白くない。別の言い方をすれば、興味がそそられない。結果、映画の中での二人(堤真一と内山理名)の描写に時間をかければかけるほど、映画内では描かれていないそれぞれの過去の時間(非常に大事な部分)が蔑ろになってしまい、深い人間関係が見えて来ない、とても中途半端な映画でした。また、予告編でもチラシでもやたらと「この19年間、決して交わることのなかった父と娘が・・・」なんて言ってるんですけど、これがどうしようもないネタバレになってます。だって映画の中では匂わせているだけで、ハッキリ言ってません。最初から「この二人は親子なんだ・・・」と思って観るのと、「この二人ってどういう関係なんだろう・・・」って観るのとは全く違いますから。そういう意味では予告編で評価を落とした珍しい例です。『ココニイルコト』で可能性を感じさせてくれた長澤雅彦・・・『ソウル』『13階段』、そして今作と観てきて化けの皮が剥がれてきたかも・・・好いところもあるんですけどねぇ・・・。


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