囚はれのシネマ日記
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| 2006年07月19日(水) |
イザベル・ユペール展 |
72人の写真家がイザベル・ユペールだけを撮つたポートレイトを集めた写真展といふのがあつた。 恵比寿ガーデンプレイスのなかにある東京都写真美術館にて。 この写真展は2005年11月ニューヨークに始まり、パリ、ベルリン、マドリード、東京を巡回し、このあとも世界を巡るらしい。 しかしイザベル・ユペールつてそんなにメジャーな女優だつたらうか? はじめは脇役だつたけれど、しだいに汚れ役の体当たり演技が評価されるやうになり、『ピアニスト』でそのポテンシャル全開、『8人の女たち』でメジャーとなる。 しかしそんなサクセスストーリーも一夜にしてならず。 『ボヴァリー夫人』での毒薬自殺のすさまじき末期の演技。 『主婦マリーがしたこと』でのヤミの堕胎屋のおそるべき人生。 『沈黙の女・ロウフィールド館の惨劇』でのはじけたあばずれぶり。 美人なのにイザベル・ユペールほど割の合はない役柄をひきうける女優はゐない。 少なくとも日本で公開された映画を見るかぎり。 しかし撮る人は撮つてゐてのだ、彼女のタダモノではない本質を。 イザベル・ユペールはいま50才。 そばかすだらけのティーンエイジャーのポートレイトから、皺だらけの現在のヴィデオまでを眺める。 続けてホールで上映される『沈黙の女・ロウフィールド館の惨劇』を見る。 無料だけれど英語字幕。 どちらもガラガラに空いてゐるのが不思議。 じつはわたしはこの映画をもう一度見たいがためにはるばる恵比寿まで足を運んだのだつた。 主演サンドリーヌ・ボネール、助演イザベル・ユペール、ジャクリーヌ・ビセット、監督クロード・シャブロル。 文盲のメイドとその友人が、雇ひ主のブルジョワ家族を猟銃で惨殺する。 無知と同義である文盲、であることがばれるのを怖れるメイドを演じたサンドリーヌ・ボネールがすばらしかつた。 その恐怖感と屈辱感の出し方が絶妙で。 イザベル・ユペールは文盲ではなく(むしろかなり知的)メイドを煽り立てるアジテーターのやうな役柄だつた。 彼女たちは過激すぎる階級闘争をしたやうに印象づけられる映画だつた。 この映画は1996年に公開されたのでイザベルは40歳ごろのはず。 ミニスカートからすらりとした脚を丸出しにしてゐるので20代かと錯覚してしまつた。 (ジャクリーヌ・ビセットにしてもその年齢とは思へないスタイルのよさはなにかしら特殊撮影でもしてゐるのかも知れない) こんな凄みのある映画がDVDにもならず忘却のかなたにあるといふのに、ろくでもない映画ばかり氾濫してゐるとは! ところでイザベル主演の最新作『ジョルジュ・バタイユ・ママン』はいまレイトショーで公開されてゐるはず。 原作の「わが母」はバタイユ全集『聖なる神』に収録されてゐるものを読んだ記憶がある。 こちらは忘却のかなたに不意にひかりをあてられた感じ。
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