囚はれのシネマ日記
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| 2006年03月27日(月) |
レマン湖のほとりにめざめる |
窓から洩れるひかりに目がさめる。 旅のあひだはずつと眠りが浅く朝早くめざめてしまふ。 でもそれももうあと一日のことだ。 ここはローザンヌのレマン湖のほとり。 カーテンを開けるとそこにはまだ明けきらない空と湖のあることの不思議を思ふ。 こんなところまで弱つちい私たちだけで来たのだ、といふ感慨が湧く。
窓枠のなかへ収める(↓)
カメラを持つてホテルの外へ出る。 時間はサマータイムで7時ごろだから本当は6時ごろ。 昨日の賑はひは潮がひくやうにすつかり消えてしまつた。 動くものはカモメと湖の白鳥と鴨と清掃車だけ。 船が着いたのだらう、エヴィアンからローザンヌへ出勤する人の群れが過ぎるとまた静寂が訪れる。 ホテルを移つてほんとによかつた。 この朝の風景と空気にナマで出会へたのだから。 いいことも悪いことも含めてローザンヌは私にとつてもつとも忘れがたい街となるだらう。 ここには生きてゐるあひだにもう一度訪れるやうな気がする。
ウッシー城ホテル・ロフトのいちばん左の窓ふたつがたぶん私たちの部屋(↓)
『ゴダールの決別』にこんな樹が出てきた(↓)
この船でエヴィアンへ(↓)
港の白鳥と鴨(↓)
なんだか分からないレマン湖のモニュメント(↓)
朝食をとるホテルのレストランの眺めは素晴らしい。 前面ガラス張りの古びた窓のすぐ向かうに湖とアルプス。 ウェイトレスは小柄な黒人の女の子だ。 カフェのウェイトレスもスタイル抜群の黒人の女の子だつた。 タクシーの運ちやんも黒人の大男だつた。 ローザンヌには黒人労働者が多いのだらう。 私たちは例のごとくお昼ごろにホテルを出てジュネーヴに向かつた。 ジュネーヴまでは列車で40分ほどだつた。 ジュネーブ駅前のモンブラン通りを500mほど行くとレマン湖にぶつかる。 ホテル・ブリストルはそのちよつと手前にあつた。 伝統的で格調高いホテルといふ感じ。 部屋もバスルームもとても綺麗で私たちは満足しホツとする。 最後の晩にみじめな思ひはしたくないもの。 さつそくモンブラン通りにある日本食レストランへ。 ウェイトレスはみな東洋人の顔をしてる。 けれど「今日のランチ定食は何ですか?」と聞くと「トンカツ!」とあまりにも歯切れよく答へたので日本人でないことが判明。 もし日本人なら恥じらひながら「とんかつ…です」と控へ目に言ふでせう。 私たちはトンカツはやめてお寿司や魚の照り焼きを食べる。 スイスの食事に苦しんできた私たちは、それを砂漠のオアシスのごとくありがたく受け入れる。 見回せばビジネス・ランチをとつてゐるらしい男性たち、母親と息子など客は西洋人ばかりだがうまくお箸をあやつつてゐる。 ジュネーヴの町を歩けば日本食レストランやスシ・バーは何軒もあり、とりわけ「スシ」はかなり市民に浸透してゐる様子。 スーパー・マーケットの魚売場にも日本のやうに「寿司弁当」のパックが売られてゐるのには感激。 このスーパーにはさつま揚げや生春巻き(タレつき)まで売られてゐたので買つて帰りホテルで食べる。 さつま揚げはサーモンを原料としてゐるがかなり近い味。 生春巻きは春雨を麺で代用してゐるのでパサついて遠い味。 さてレマン湖にかかる長いモンブラン橋を渡り旧市街へ行つてみる。 モンブランにはここジュネーヴから朝早く定期バスに乗ればで日帰りで行くことが出来る。 しかしモンブランらしい山は見渡せどどこにも見えず。 レマン湖もローザンヌのそれとは違ひ、隅田川のやうに町中を流れてゐる。 レマン湖は三日月形なので、ここはその三日月のもつとも尖つた部分だらう。 またしても旧市街のカテドラルへ行く。 わが行く手にはつねにカテドラルあり。
このサン・ピエール大聖堂で宗教改革の中心人物カルヴァンがプロテスタンティズムの説教をしたと言ふ。 カルヴァンの活躍によりジュネーヴは「プロテスタントのローマ」と呼ばれたさうだ。 旧市街はチューリッヒより穏やかであり、ルツェルンより落ち着いてをり、ベルンより明るくて、ローザンヌより垢抜けしてゐた。 チューリッヒのやうに空を穿つ尖つた塔がなく、広場を中心に開かれてゐるあかるい場所といふ印象だつた。 その広場のカフェに座つてゐると聞こえてくるのはフランス語だけだ。 小路を歩いてゐるとアコーディオン弾きが「ボンジュー・マダム」と微笑むので、私も「ボンジュー・ムシュー」と答へる。 ああ「ボンジュー」以上の受け答へができるやうな正真正銘のマダムになりたいものですわ。
ジュネーヴはぐるりをフランスに囲まれてスイスから突き出てゐる。 そのくびれ部分はわづか幅4km。 ゆゑに国際空港などあちこちの土地をフランスと共有してゐる。 ジュネーヴはほとんどフランスではないか、さう思ふのだつた。 夜になつてレマン湖へ行つて見るが、あたりに人はほとんどゐない。 対岸の灯りもそれほど明るくはない。 暗い湖面がなにか日本の地方都市の駅前のやうにさびしい感じを醸し出す。 わたしは東京の夜景の毒の花のごとき鮮やかさに狎れすぎたのかも知れないなあ。
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