囚はれのシネマ日記
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2006年03月21日(火) チューリッヒの右岸・左岸〜水の都ルツェルンへ

チューリッヒはチューリッヒ湖へそそぐリトマ川を挟む右岸・左岸からなる小ぢんまりした街だつた。
私たちが泊まつたのは右岸にある旧市街のニーダードルフ・シュトラッセ(通り)。
くねくねした石畳の小路の両側にはレストラン,時計屋、チョコレート屋、アンティークの店、画廊、本屋、八百屋が美しく並んでゐた。
ヨーロッパの美しさはこのやうな小路と広場にありと思ふ。
ホテル前の広場は夜になると街灯がともり、この肌寒さのなかテラスにも市民が寛いでゐた。
昨夜は疲れてゐたので広場に面したイタリアン・レストランに入つた。
とても洒落た感じの店だつたのだけれど注文に失敗した。
なぜかラザニアと間違へてラビオリを注文してしまひ、それもチーズとオリーブオイルにこつてり浸されてわたしにはとても食べられないシロモノ。
愛想のいいイタリア風支配人が特異げにチーズを卸してくれるのだけれど、わたしはゲンナリする。
娘のリゾットは美味しかつたらしい。
ああ暖かいきつねうどんが食べたい。
あまり熟睡できずに朝早く目を覚ますと小鳥の歌声、時計塔の鐘の音がする。
昨夜は雨が降つたらしく石畳の道がぬれてゐる。
自転車でやつてきて広場の噴水をていねいに洗ふおぢさんがゐる。
出勤するらしいチューリッヒ市民が広場を横切つて行く。
清掃車が来る。
一日のはじまりだ。
街角のところどころに雪が残つてゐるものの今日はぽかぽかと暖かい。
スイスにもやうやく春が来たのだらう。
右岸にあるグロウミュンスター(大聖堂)、ヴァッサー教会を見てミュンスター橋を渡り左岸へ移り、シャガールのステンドグラスが美しいといふフラウミュンスター(聖母聖堂)を見て、川岸を歩きカフェに入る。
どぶ臭いリトマ川にはカモや白鳥が浮かんでゐるけれど鳥インフルエンザには侵されてゐないんでせうね。
隣のフランスやオーストリアでは感染拡大らしいけど…
川岸のカフェのマダムは優しさうな人だつた。
そして左岸の目抜き通りであるバーンホフ・シュトラッセ(通り)も歩く。
でもお昼ごろにはホテルをチェック・アウトしてつぎのルツェルンへ列車で向かはなければ。

ホテルの近くチューリッヒで一番高い塔をもつプレディガー教会(↓)




ふたつの塔を持つ大聖堂、ステンドグラスはジャコメッティ作(↓)




河口近いケー橋から眺めるチューリッヒの街(↓)



お昼ごろタクシーで国鉄チューリッヒ駅へ行く。
そこは昨日買ひ物をしたスーパーマーケットCOOPのすぐそばだつた。
私たちはミネラル・ウォーターや果物を買つた。
これなら駅までもホテルから歩いて10分もかからなかつただらう。
駅の窓口でスイスパスのヴァリデーションをする。
スイスパスは鉄道・船・市電・バスが乗り放題の外国人旅行者用パス。
ヴァリデーションは使ひ始めの今日の日付とパスポートの名前を書き込むこと。
ルツェルン行の列車はいちばん端つこのホームからだつた。
やがてホームに入つて来た列車はひどく汚れて窓ガラスもホコリで曇つてゐた。
日本では新幹線も特急もふつうピカピカに磨かれてゐるものだけれど、観光国スイスの列車が汚いといふのは意外だつた。
たとへこの列車が氷河特急やパノラマ特急のやうな観光列車ではなく市民の足だとしても。
車内はがらがらに空いてゐるのでスーツケースを座席のそばに置いても問題ない。
ルツェルンまではおよそ1時間。
次の駅のお知らせはボソリと一回あるのみなので聞き漏らすまいとちよつと緊張する。
そして無事にルツェルン到着、かなり大きな駅だ。
ふたたびタクシーでホテル・デ・バランスへ。
駅前の風景はいづこも同じで騒々しく殺風景なものだ。
それがロイス川を渡り旧市街へ乗り入れると一変する、チューリッヒのやうに。
車の乗り入れを禁止してゐるせいかも知れない。
ルツェルンもまた湖へ注ぐロイス川を挟んで旧市街と新市街が向き合ふ、小ぢんまリとした街だつた。
どことなく北のベネツィアといつた趣のある街だ。
無数の人がペストで亡くなり消毒の匂ひが漂つたという昔を想像する。
ルツェルンの象徴である屋根つき木橋・カペル橋は1333年に完成したヨーロッパ最古の木橋で湖から襲つてくる敵から街を守る城壁の一部だといふ。見張り台の八角の塔が川のまん中に立つてゐる。東の砦がこのカペル橋であり西の砦がシュプロイヤー橋。ふーん、橋が城壁の役目をしてゐたとはなんと守りの堅い街なんでせう。

そのカペル橋(↓)





旧市街の目抜き通りにあるホテル・デ・バランスは12世紀の歴史的建造物で、壁に描かれたフレスコ画で有名なり。このフレスコ画をカメラに収めてゆく観光客が後を絶たず、それを窓から眺めることもまた楽しい。3階の中央右のふたつの窓がたぶんわたしたちの部屋だ(↓)。




このホテルはロイス川に面してゐるのだが、残念ながら私たちはリヴァー・ヴューの部屋ではなかつた。
ルツェルンに着いてまづしたことは何かおいしいものを食べること。
私たちは切実さにかられて駅の向かう側にある韓国料理店を探しあてる。
娘は石焼ピビンパをわたしは豆腐のチゲ鍋を注文して食べる。
そしてはるばるスイスまで来てアジアの料理の美味しさに感銘をおぼえる。
同じ発酵食品でもチーズとキムチのなんちゆー違ひ!
はたして韓国人のツアー客らしい一団が店の奥から出て来た。
はたしてこのキムチの味を西洋人は受け入れられるものだらうか?
久しぶりに満足した私たちは旧市街へもどりロイス河畔をぶらぶら歩く。
まだ肌寒いのに河畔にテラスでは多くの人がアイスクリームを食べたり、大きなティラミスにかぶりついたりしてゐる。
旧市街にはブランド・ショップ、時計屋、チョコレート屋、おみやげ屋、ピカソ美術館、そしてスーパーマーケットCOOPもあつた。
われらが行く手にはつねにCOOPあり。
私たちはピカソ美術館に入り、みやげ物を物色し、COOPで買ひ物をした。
そしてホテルへ帰つてしばらく休んだ。
さうこうする内にまたしても魔の夕食の時間がやつて来る。
めんどうくさいのでホテルのリヴァー・ヴューのレストランへ。
美しくてきぱきしたウェイトレスに導かれて真つ白なテーブルクロスの上に蝋燭と花が飾られたテーブルに着く。
窓の外にはロイス川面に灯りがゆれてとても一流な感じ。
でもメニューがよく分からない。
わたしはからうじてじゃがいもとチーズのニヨッキ、ブリア・サバラン・ソースがけを読みとり、肉ぢやないからこれでいいかもと注文する。
あとはローカル・赤ワインとサラダ。
しかしサラダは一皿をふたつに分けてくれたと言ふもののボウル一杯のキャベツとにんじんの千切りのてんこ盛り、別名馬サラダ。
そしてニョッキはと言へばチーズとお菓子のサバランの甘さで味付けした小じやがいもが30個ぐらいゐ小石のやうにお皿に敷き詰められてゐるもの。
一口、二口、三口を拷問のやうに呑み込み…ああなんてキモい味なんだ!
あとは娘に任せやう。
娘の注文した魚のホイル焼きも油つこくて塩・胡椒の味しかしなかつたといふのだから、私たちは揃つて賭けに大負けしたといふことなのだらう。




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