囚はれのシネマ日記
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2005年10月02日(日) メイキング・トゥーランドット

その紫禁城でのオペラ『トゥーランドット』公演のメイキングである『トゥーランドット』といふ映画をたまたま昨日ムービー・プラスで放映してゐた。
フィレンツェ歌劇場が『トゥーランドット』の舞台である中国で、中国の演出家と組んで上演するといふ一大プロジェクトである。
指揮者のズービン・メータは東洋的な色彩のオペラがやりたい、と言つた。
それはカラヤンの果たせなかつた夢でもあるらしい。
指揮者のズービン・メータはインド人なので、中国は遠い見知らぬ国ではない。
しかしこのプロジェクトは通訳を介してイタリア語、中国語でそれぞれの製作者の主張を通す、気の遠くなるやうな作業に見えた。

演出家のチャン・イーモウは有名な映画監督ではあるが、イタリア側の製作者とはぶつかりあつてゐた。
たとへば照明について。
チャン・イーモウはこのオペラのために明朝の時代の衣装をあらたに用意した、それも膨大な数を。
その衣装の刺繍をしたのは2000軒の刺繍家にもおよぶといふ。
だから照明を隈なくぎんぎんに当ててその見事な衣装を見せたいといふ。
しかしイタリアの照明監督はそんなコンセプトは間違つてゐるとして譲らない。
たしかに西欧のオペラでは光と影をアクセントとして、陰影のある舞台を演出してゐるやうに思ふ。

またチャン・イーモウは中国の軍隊から300人の兵士を呼んで、このオペラの兵隊役を演じる訓練をさせた。
そのほかに中国の50人の舞踊団、300人のエキストラを使ふといふ。
それだけでも合計650人!
このほかに(中国人ではないが)歌手や合唱団やオーケストラが入ると合計1000近い人が舞台にあがるといふことに。
チャン・イーモウは中国サイドからも多数の人を起用して、西洋に負けじといふ東洋人の意地を表明したのだらう。
だつてそもそもこの『トゥーランドット』はプッチーニの作曲ではあるが、明朝のトゥーランドット姫の物語なのだから。
チャンは中国の大道具の係の男たちに「ヨーロッパではオペラはエレガントなものなんだ、だから舞台の大道具を動かすときも静かにそして素早くしなくちや駄目なんだよ」としきりに言ひ聞かせてゐた。
そしてそれを真剣に神妙に聞く中国の大道具の男たち。
このプロジェクトによつてチャン・イーモウは、といふか中国は、国の威信をかけて文化の起死回生をはかりたかつたのではなからうか、と思つた。


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