囚はれのシネマ日記
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| 2005年08月01日(月) |
アラン・レネの良き趣味 |
アラン・レネの映画に『アメリ』のあのオドレイ・トトゥが出たといふことはちよつとした驚きだつた。 アラン・レネといへば『去年マリエンバートで』によつてこれぞフランス映画といふ金字塔を打ち立てた作家だつた。 感じやすい二十歳ごろにあの映画を見たときのショックは大きかつた。 映画にとつて筋を追ふなどはじつにヤボなことだと初めて知つた。 その脚本を書いたアラン・ロブ=グリエのすべての小説ががやはり筋を追はない反小説であるやうに。 しかし見るものを幻惑させるのは映像の得意とするところ。 小説ではあの万華鏡のごとき超現実性が出せてゐたのかどうか… デルフィーヌ・セリーグといふ女優がまたすばらしかつた。 衣装も髪型も化粧も動作も表情も、すべてが「心ここにあらず」の女の風情を演出してゐた。 あの映画は、アラン・レネがいかに細部にこだはり全体に奉仕させる、つまり妥協を許さない作家であるかを物語つてゐたと思ふ。
80歳を超えたアラン・レネが作つた映画『巴里の恋愛協奏曲』もやはりその趣味が徹底されてゐた。 その趣味といふのは口パクのオペレッタのことではない。 (『恋するシャンソン』と言ひこの映画と言ひ、老アラン・レネは口パクのオペレッタ趣味を持つにいたつた。) 『巴里の恋愛協奏曲』は1925年といふ時代設定、つまりアール・デコ様式にこだはつた映画らしいのだ。 女性たちの着るドレス(あのオドレイ・トトゥも)はすべて洒落たアール・デコ・ファッションである。 洗練された家のインテリア、台所からテラスに至るまでの小道具もやはりアール・デコ調で統一されてゐるらしい。 サロンの窓と椅子の調和のなんとうつくしいこと! 話はその洗練された金持ちの家の奥方、俗に言ふ有閑マダムをめぐる恋物語といふ他愛もないものだ。 でも有閑マダムをめぐる恋物語といふ意味ではあの『去年マリエンバートで』だつてさうだつたのだ。 問題はそれをどんなスタイルで描いたか、だ。 この映画はアール・デコ・口パク・オペレッタといふ幾重にも意匠がこらされたまつたく奇妙なシロモノだつた。 アラン・レネのこだはりと洗練はいまだ健在といふことだらうか。
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