囚はれのシネマ日記
DiaryINDEX|past|will
バルセロナ2日目はいよいよモンセラットだつた。 バルセロナからおよそ1時間、バスで険しい山道をかなり登る。 ガウディが霊感を受けたといふ「のこぎり山」。 ワグナーがオペラ「パルシファル」で舞台背景に使つた山。 キリスト教の聖地としてスペイン全土から巡礼が訪れる聖なる山。 巡礼はもちろん徒歩でこの山を登る。 モンセラットといふ名はスペインでは女の子につけられることも多いらしい。 でも名づけられた女の子は嬉しいだらうか? ゲーテ(だつたかな?)も「魔の山」と呼んだと言ふし。 まことにそれは神が創りたまひし山、といふやうな恐山だつた。
標高1235mのその山腹には11世紀からつづくベネディクト派修道院がある。 礼拝堂には「ラ・モレネータ」と呼ばれる黒いマリア像が祀られてゐる。 12世紀にひとりの羊飼ひが洞穴でこのマリア像を見つけて以来モンセラットは聖地となつた。 ナポレオンが侵略したときこのマリア像だけは土地の人によつて隠され守られたと言ふ。 フランコ独裁時代にはこのマリア像の前でだけは禁止されたカタルーニャ語でミサが行はれてゐたと言ふ。 この黒いマリア様の頭を撫でると願ひごとがかなふと言ふので祭壇に寄りそれぞれひと撫でする。 しかし一体わたしは何を願つたのだつたかしら? 礼拝堂では巡礼グループのための特別ミサがしめやかに執り行はれてゐたので私語は慎みつつ。 ミサではパイプオルガンがあまりにも天上的な音色をハモつてゐたのでわたしも暫しキリスト教徒となつて天にまします神に祈つた。 すると大きな祭壇のまんなかに人がつぎつぎに現れては消えてゆく動画のやうなものが見える。 なるほど。 それは黒いマリア像の祀られる場所がちようど窓のように刳りぬかれてゐて、祈りに来る人たちの姿を礼拝堂から眺められる作りになつてゐたのだ。
↑礼拝堂前の広場
長らく思ひ描いてきたモンセラットの佇まひにわたしが失望することがなかつたのはあのミサのためだつた。
|