囚はれのシネマ日記
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2004年05月07日(金) 霧に閉ざされて

何によらずはじめての体験はどきどきする。
(わたしはおなじことの反復によほど耐へられないタチらしい)
半世紀も生きてしまへばどきどきすることなんてめつたにない。
この黄金週間のなかにそれはあつただらうか?
あつたとすればそれは霧のなかの運転しかない。

国道135号線の渋滞をさけて伊豆スカイラインを熱海峠まで走つた。
新緑のみどりみどりのしたたるなかをスイスイと走る。
ひかりのなかの新緑はことに美しくまぶしい。
ウグイスも澄みとほるやうな声にてホケキョと啼けり。
しかし雲行きがあやしくなつたのは亀石峠を過ぎてからだつた。
だんだん空が低くなりもやもやした靄につつまれ視界が悪くなる。
ああこれは霧の予兆だとほの暗い気持ちに閉ざされる。
見れば対向車はフォグランプを灯してくるではないか。
といふことはこの先は深い霧かもしれない。

そのとほり進むにつれれだんだんどんどん深くなる霧。
たちこめる霧のなかでわづかに識別できる白い車線。
そしてわづかに見える前を行く車のテールランプ。
わたしは前を行く車を見失ふまいとして必死についてゆく。
先頭の車は気の毒にも霧のなかで道をきりひらいてゆかなければならない。
わたしの左目の視力はおよそ1・2以下。
でも右目はおよそ0・2以下のがちや目。
メガネは度が合はなくなつたのでかけない。
その見える方の左目をつぶつて運転しているやうなものだ。
さらに霧がふかくなれば車線も何も見えなくなるだらう。
視界ゼロ…そんな怖いことがあり得るのかどうか。

熱海峠を過ぎてわたしは運転を同行者とかはつた。
そのあとはもつとも高い大観山にさしかかり霧も最高潮に達した。
でもその霧を切り抜けるのはわたしの任務ぢやない。
わたしはリラックスして助手席でガムをくちやくちや噛んでをりました。



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