所用で、お昼から実家。
母との会話の中で、ふと母方の祖父の話になった。 だいぶ前から家でほぼ寝たきり状態ではあったのだが 実はここのところ入院生活を余儀なくされている。 とはいえ頭はしっかりしているので 超がつくほどのワガママなのは相変わらずらしい。
もう一つ、しっかりしているのは頭だけではなかった。
90歳のこの祖父、歯は殆ど抜けたりすることなく全部自前で (半年年上女房の祖母は、とうの昔に入れ歯である) 50代までお酒の王冠を歯で開けて見せたり 60代になって生まれて初めて歯医者に行ったというツワモノ。 そういえば20年近く前、まだ足腰も弱っていなかった頃 祖父がよく私に言っていたことの一つは 『小さい魚なら頭から骨ごと食え』であった。
その武器、もとい丈夫な歯は 点滴を引き抜くことなどを防止するためにはめる“保護手袋” (5本指全部をひとつの袋に収める形になっている)までも 夜中食いちぎってボロボロにしてしまったという。
何かを手に取ろうとしたら手袋のせいでうまくいかず 癇癪を起こした結果なのだそうだ。 もっとも『うざったいから』と点滴を引き抜いたのが 手袋をはめられた発端だから、ある意味自業自得というもので。
しかし鍋つかみミトンくらいの厚さくらいありそうなそれを まさかそんなおじいさんが食いちぎるとは、誰だって思わないだろう。
それを半ば呆れながら話す娘(母)に対し、苦笑しながら聞く孫娘(私)。
祖父とそれぞれの関係は、こんなところに出るのかなと 帰り道に車を飛ばしながら一人考えていた。
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