明後日の風
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「オフだぁ〜!」と決めてやってきた山奥のいで湯。 ぬるい高濃度のラジウム泉にゆったりと入るというのがお作法であるこの温泉地では、皆、1時間、2時間と湯船に浸っている。本を持ち込んで読む人、眠ってしまい湯船で溺れそうになる人、ただじんわりと浸る人、時間の過ごしかたは人様々だが、共通するのは「無言」が基本であること。隣の川の水音と注ぎ込まれる温泉以外の音がない。時間の過ぎ行く中、自律神経が「収まっていく」(あるいは「納まっていく」なのか)のを体験する。決してクールダウンではない、この絶妙な心の鎮め方は、なかなか実感できない。 ターボチャージャーでヒートアップしてしまったエンジンをすぐに切ることができないように、現代人も急にはエンジンを切りにくい。そういう我々に、「座禅」よりはずっと気軽に参加できるこの機会を、僕は楽しみにしているのだ。
翌朝。 昨日の霞が嘘のように、「キリッ!」と晴れた。
渓谷沿いの温泉小屋は、相変わらず川の瀬音だけが響いている。
帰路、僕は高台に車を走らせた。 越後駒ヶ岳は、まだ残雪が多い。いつぞ飲んだ、あの、山頂直下の雪解け水がリフレインする。
「うまい、へぎそばを食べよう」と僕はその隠れた眺望の地を後にする。
さわ
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