徒然帳
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2008年07月24日(木) |
.....タイトル未定(ヒカ碁/逆行/捏造) |
もう一度、逢いたい。それだけを望んでいる。 奇跡のように出逢った俺達は、期限付きの奇跡であることを知らないままに別れて、失ってしまった。
最初は無気味だった。 不可解だった。 信じられなかった。
けれど時を重ねていくうちに、俺はお前を何時の間にか受け入れていた。当たり前のようにのに、ずっと、ずっと一緒にいるものだと思って、その奇跡にも近い確率でお互いが存在して触れあっているのだと知ったのは、全てを失ってからだった。
愚かで子供だった俺は、その当たり前を当然のことと気にもしていなかった。
ああ、どうして……? 何故なんだ……!!
狂ったように泣き叫び、癇癪を起こして有り得ない奇跡を何度も願った。 その為に犠牲にしたものもあったし、周囲を傷つけもした。 幼馴染み、級友、同期、ライバル諸々を……。
そして幾度目かの涙を流した果てに、俺は失ったものが二度と戻らないこと知る。このどこまでも空虚な心を抱えて生きて逝くのだと一一一一覚悟をした。
望むものはただ一つだけ。 アイツだけを夢見て、絶望に涙した。 脳裏に浮かぶ優しい微笑みは、いつだって俺に痛みを教える。
忘れていけないと、いうかのように。
「一一一一一ねぇ、おじいちゃん。ここに黒を置いたらどう?」
ああ、孫の声だ。
「おじいちゃん?」
可愛くて囲碁好きの、儂によく似た孫娘だ。 孫の中でも私の囲碁好きが遺伝したんだと言われていてるほどの囲碁好きで、院生になるために今はもっぱら儂の所に来て修行中だ。 これでも儂は幾つものタイトル保持者だからな。 囲碁クラブや教室に通うよりは、儂に教わった方が強くなれるのは確かだ。
年々、下からの追い風は目を見張るものがあるが、まだまだ負けは譲らん。生涯現役を掲げ、いつでも本気120%で返り打ち。特に本因坊戦は負け無しで連続記録を続けている。
………本因坊はな……。 アレだけは譲る気は無い……。
おっと、気がそれた。 そういえば呼ばれていたっけな……。
「 一一一一おじ いちゃん」
おや? なんだか聞こえないな。 小さくて音が……
「 一一一 一一一 ん一一 」
ああ……少しだけ待っていてくれ。 すぐに目覚めるから。
今日は暖かいから、庭で打とう。 きっと気持ちがいいだろうな……。
そういえ、ば、
アイ ツ とも 庭で 一一一一一
そして儂は俺に戻る
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bzen
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