女の世紀を旅する
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2005年01月16日(日) 地球大進化(1)


《地球大進化》NHK特番




12月末のNHKテレビ特番「地球大進化」は最新の学説を織り込み,大変興味をそそる衝撃的な内容であった。地球46億年の歴史をわかりやすく,そしてその生成発展のプロセスと,地球と生命と人類の進化の壮大な過程を映像つきで科学的に検証している。人類の生命の進化はまさに奇跡に近いものだったことが理解できた。その衝撃的な内容の数々に驚かされた。人類文明5000年の繁栄も地球46億年のほんの刹那にすぎない。あと数万年後には地球文明も滅亡している可能性が高いことも,この番組は示唆していたが,説得力が感じられる。それにしても数十億年に及ぶ地球の進化,人類の進化の過程がここまで判明したことに,尽きぬ興味を覚えさせられた。


自分という人間がこの地上に生まれ,人間として生きているということ自体が奇跡の上に成り立っていたことを痛感する。太古の時代からの原始生命の連鎖の果てに,自分という一個の生命が出現していることに驚嘆の念をおぼえざるをえない。

以下は,その番組内容の概略である。






【1】 生命の星 大衝突からの出発

 最新研究から地球は誕生(46億年前)そのものから大変動を繰り返して生まれた星であることがわかってきた。もともと現在の十分の一しかなかった原始地球は、火星大の原始惑星との衝突を繰り返して巨大化した星だったのだ。



●原始地球

 こうした新しい地球の成長モデルは、東京工業大学の井田茂助教授と国立天文台の小久保英一郎助手を中心とする研究グループが発表したものである。月形成のモデルとして注目されている「ジャイアント・インパクト」説をさらに発展させた説ということもできる。
 この説によれば、地球の大きさはある程度、偶然で決まったということになる。小久保助手は「地球が現在の半分だったり、倍以上だったりした可能性は十分にある」と言う。


●生命の星

 ところが、この大きさが「生命の星」の運命を大きく左右する重要な要素なのである。それを逆説的に教えてくれるのが、火星である。火星は衝突を経験しなかった原始惑星の生き残りと考えられている。重さが地球の十分の一である火星は現在、海も大気もほぼ失った状態である。大気を失った過程はまだ明らかになっていないが、重力が小さかったことがもっとも根本的な原因であると指摘されている。
それに対し、巨大化した地球は、大気を長く保つようになり、いまもなお「生命の星」としての条件を保っている。


●隕石重爆撃期

 しかし、その反面、巨大隕石を何度も引き寄せる「隕石重爆撃期」を生み出すことになった。その最大のものは直径400キロ。それほどの巨大隕石が衝突すると、衝突熱のために岩石そのものが蒸発して蒸気となり、地球全体を長期間覆うことになる。この岩石蒸気の温度はじつに数千度。その熱のために一ヶ月後には、すべての海洋が蒸発してしまった。これが40億年前に起きたと考えられている「全海洋蒸発事変」という大変動である。(今回は、海外の研究者のほか、東京大学の杉田精司助教授の多大な協力のもと、その映像化にチャレンジした。)



●究極の祖先=原始生命の誕生

 その当時、海には私たちの究極の祖先=原始生命がすでに誕生していたと考えられている。では、どうやって原始生命は“ふるさと”である海がすっかりなくなるという未曾有の危機をくぐり抜けたのか。その鍵は地下だ。海底から1キロより深い地下では、岩石蒸気に覆われているあいだも、一定量の水が残っていた。そこが地球上で唯一、生命が存在できる環境だったのだ。私たちの祖先はいったん地下深くに進出し、そこで生き延び、さらに海が復活したのちに海へと再進出した一群のなかに含まれていたのである。

 こうした大変動は誕生直後だけのことではない。じつは地球はその後も苛酷な変動を繰り返した星であり、そこに生きる生命は、地球変動による度重なる絶滅の危機をくぐり抜けなくてはならなかった。そうした大変動をくぐり抜けるたびに、生命は私たちへの進化の階段を上がったともいえる。地球の環境変動に対抗するべく、生命が40億年に渡ってあみ出し続けた新たな機能の果てに、私たち人間があるのだ。その意味で、地球変動は、私たちを生んだ原動力なのである。



【2】 全球凍結

 40億年の生命の歴史のなかで、80%以上の時間、つまり、およそ6億年前まで、私たちの祖先は微生物のままだった。
生命にとって「大きくなる」というのは、想像を絶するほどに難しかったのだ。では、大きくなったきっかけは何だったのか。長い間、大きな謎とされてきた。


●スノーボール仮説

 その謎に迫る仮説が「全球凍結」仮説、別名「スノーボール仮説」である。22億年前と6億年前の二回、地球は海も陸もすべてが凍りついたとする仮説だ。この異変は、地球全体の食物連鎖を破壊し、すべての生命を絶滅寸前にまで追い詰めたとされている。


●史上初,最大の環境汚染

 原因はまだよく分かっていないが、生命自身の関与の可能性が指摘されている。22億年前の全球凍結に関しては、光合成の開始が酸素を生み出し、大気中の温室効果ガス・メタンを激減させた。そのために寒冷化したという説があり、6億年前には、メタンと酸素のバランス変化に原因の一端があるとする考えがあるのだ。
そのほかの要因も重なっている可能性もあるが、私たち生命自身の関与が大きいとすれば、全球凍結は、史上初・最大の環境汚染ということもでき、強烈な地球からのしっぺ返しということもできる。

●光合成の停止・生命の死滅

 6億年前の段階でも生命はほとんどが海にいた微生物だった。全球凍結仮説の提唱者の一人、ハーバード大学のホフマン博士は、海は1000メートル以上凍ったと考えている。その深さまで太陽光は届かないから、光合成は停止し、大多数の生命が死滅したはずだという。全球凍結状態は氷のアルベド効果のため、数百万年以上は続く。


●生命史上もっとも危機的な状況

 生命、特に光合成生物はどこで生き延びたのか。候補のひとつとして考えられているのが、地熱地帯だ。海底火山の火口付近では、ぽっかりと氷に穴が開いていて、そこで生き延びたというわけだ。いずれにせよ、生命史上もっとも危機的な状況だったとする研究者もいるほどの異変だったのである。


●生物の巨大化

 ところが、この危機こそ、長い進化の停滞を打ち破るきっかけになった可能性が浮かび上がっている。提唱者は、カリフォルニア工科大学のカーシュビンク博士だ。博士によれば、全球凍結の終わり方にその秘密があるという。

 海面が凍結したことで、本来は海にとけ込むはずの火山ガス中の二酸化炭素が大気に蓄積され、ゆっくりとした温暖化がはじまったのだ。平均気温摂氏50度を超えたとき、全球融解が突如としてはじまった。一転して出現した高熱地球は光合成細菌の大繁殖を生み出し、酸素濃度を激増させた。つまり、全球凍結は「酸素ポンプ」ともいうべき役割を果たしたのだ。


●史上初の大型多細胞生物

 22億年前の全球凍結後には、真核生物が出現した。サイズは10倍にもなったわけだ。6億年前の全球凍結後には、史上初めての大型多細胞生物といわれるエディアカラ生物群集が誕生した。このときは酸素増加によってコラーゲンの大量生産がはじまったではないかと考えられている。コラーゲンというタンパク質はいわば細胞の接着剤のような役割を果たしている。このコラーゲンの大量生産によってさらなる大型化が実現したのだ。

 こうして,全球凍結という大変動を経て、生物は初めて人間への進化を始めたといえるのである。




【3】大海からの離脱 そして手が生まれた

 地球内部のマントルは岩石で構成されているが、長い時間で見ると、ゆっくりとした熱対流をしている。その対流が原動力となって、地球表面の大陸は絶えず移動をしている。


●大陸移動と生命進化

 この大陸移動は生命進化に大きな影響を及ぼしている。 35億年以上、海のなかにとどまっていた私たちの祖先がついに上陸を果たすのも、そうした大陸移動という変動が背景にある。
 脊椎動物の上陸は、4億年前から3億5500万年前にかけて起こった出来事である。当時は、赤道付近にあった3つの大陸が次々とぶつかり、巨大大陸ローラシアが形成されていった時代である。もともと生命が多く生存できるのは、大陸周辺の浅い海に限られる。太陽光が差し込み、活発に光合成が行われるためだ。


●巨大大陸ローラシアの成立

ところが、大陸が一つに集まると、この浅い海が減ってしまう。そのため、生存競争が激化することになる。ローラシア大陸形成時には、板皮類という魚の種が生存競争を勝ち抜き、支配者にのしあがった。
 弱者の立場にあった私たちの祖先=硬骨魚は浅い海を諦め、別世界を目指す道を選択した。その別世界こそ、巨大山脈の麓に成立した淡水世界だった。


●淡水世界の成立

 大陸移動は浅い海を奪う一方、巨大山脈を形成した。大陸移動は大陸同士の衝突後もつづく。衝突現場は両側から押されて次第に盛り上がっていき、巨大な山脈へと成長をはじめるのだ。巨大な山脈の誕生は、雲の流れをさえぎり、その斜面に大量の雨が降るようになる。この雨が集まり、ふもとへと流れる河へと成長する。その結果、大陸の内部に巨大な河という新たな淡水の世界が誕生する。

 当時、形成された山脈はカレドニア山脈と呼ばれている。私たちの祖先ユーステノプテロンと呼ばれる魚はこのカレドニア山脈の周辺にできた淡水域に進出したのである。


●地球最初の木

 その進出を支えたのは、地球最初の木アーキオプテリスだった。高さは最大20メートル。ありあまる空間と太陽光を独占し、3億7千万年前の地球に大繁栄した植物だ。アーキオプテリスは直射日光をさえぎり、土壌を安定させるなど、淡水世界の激しい変動を緩和させる役割を果たした。さらに、重要な栄養の供給源ともなった。水中に落ちた大量の葉が分解され、その養分が祖先たちの貴重なエサになったのである。


●肺の獲得

 しかし、淡水域は水量の変動が大きい。水の少ない時期には、大量の葉の分解によって、水中の酸素が不足することになる。その環境で生き抜くために、多くの魚が肺を進化させた。ユーステノプテロンも肺を持っていたと考えられている。
   

●手の獲得

 では、私たちはいつ手を持ったのか。
それはユーステノプテロンにつづく祖先、アカンソステガである。肺を持った魚たちが多様な進化をはじめ、淡水域でも生存競争が次第に厳しくなった。なかには大型化で生き延びようとする種もあらわれ、5メートルを超える巨大な肉食魚も誕生した。
 一方、私たちの祖先は手を進化させる道を選んだ。あえて多くの枝が堆積する劣悪な環境に逃げ込むことで生存をはかったのだ。そうした環境では、早く泳ぐ必要はない。枝を掻き分けて移動するほうが適している。そうした必要から、前ひれから手(前肢)の進化がはじまったと考えられるのだ。そして、その進化が上陸への決め手になったのである。


カルメンチャキ |MAIL

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