観能雑感
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2006年12月10日(日) 宝生会 月並能

宝生会 月並能 宝生能楽堂 PM1:00〜

 今年最後の月並能は豪華な番組。中正面後列正面席寄りに着席。場内8〜9割の入り。
 諸事情で激しく気力減退中のためごく簡単に。

能 『巻絹』イロエ
シテ 三川 淳雄
ツレ 山内 崇生
ワキ 野口 敦弘
間 善竹 大二郎
笛 藤田 朝太郎(噌) 小鼓 住駒 匡彦(幸) 大鼓 國川 純(高) 太鼓 金春 國和(春)
地頭 近藤 乾之助

 シテの装束は常の時と変化なし。品良く華麗だがどこか威圧的で神懸りの巫女という役柄に即していた。小書付ゆえか、常では入らない場所にも太鼓が入っていたような気がするが、定かではない。神楽の替りに長めのイロエが入る。人ならざるものの存在を間近に感じさせる緊張感があり、効果的。正先で幣を捨てるまでの所作が思いのほか激しく、人の身に神を宿すことの負荷の大きさを思った。

狂言 『八句連歌』
シテ 善竹 十郎
アド 大藏 吉次郎

 和泉流とは随分話の流れが異なっていた。和泉流では風雅さが強調されているが、こちらは貸主と借主のそれぞれのっぴきならない事情を反映しており、貸主が借主のところを訪れると借主は居留守を使う。連歌によるやり取りの後、証文を返され、和泉流ではここで終るが大蔵流では借主がこれさえ貰えばこっちのものだと証文を引き裂いて終曲。どちらか好きかと問われれば、和泉流の方。

能 『葛城』
シテ 三川 泉
ワキ 宝生 閑
ワキツレ 大日方 寛、梅村 昌功
間 大藏 彌太郎
笛 藤田 大五郎(噌) 小鼓 幸 清次郎(清) 大鼓 亀井 忠雄(葛)
地頭 今井 泰男

 いつも思うが泉師の幕内からの呼掛けはいい。それだけでシテの存在そのものを確定してしまう。標を炊く際の扇で風を送る何気ない所作が優美で繊細。序ノ舞後の「恥づかしやあさましや」で俯きつつ扇で顔を隠すところはそのまま消え入ってしまいそうなくらい儚げ。三熱の苦しみから解放されたのも束の間、結局女神は己を恥じたまま消えて行く。
 
能 『融』
シテ 寺井 良雄
ワキ 宝生 欣哉
間 大藏 千太郎
笛 小野寺 竜一(噌) 小鼓 森澤 勇司(清) 大鼓 上條 芳暉(葛) 太鼓 麦谷 暁夫(観)
地頭 佐野 萌

 小書なしの「融」は今回が初めてのような気がする。シテの謡に緩急がなくて前場は間延びした印象。この曲の僧は欣哉師以上にぴったりな配役はないと思っている。相変らず下居姿が端正。
 後シテは狩衣に指貫という最も基本的な出立。中将の面と初冠のみなのでシテ本人の年齢が表出してしまうが仕方がない。早舞はノリが今ひとつだった。若手の笛を聴くと情趣のあるアシライを吹くのは実に大変なことなのだと改めて思う。

 終了予定時刻より30分過ぎて全番組終了。日曜日の夜には辛い。


こぎつね丸