観能雑感

アクセス解析

body{margin:0;}.NIN{padding: 0;margin: 0;position: absolute;width:100%;height:100%;background-color:black;color:white;}

観能雑感
INDEX｜past｜will

2006年10月08日(日)

宝生会　月並能　

宝生会　月並能　宝生能楽堂　PM1:00～

　持病による痛みで目が覚め、睡眠不足な上に痛みがあり、外出を断念したくなるも何と言っても近藤乾之助師のシテがあるので出かける。中正面脇正面寄り後列に着席。見所は6～7割程度の入りで空席が目立った。
　時間が経ってからの記述であり、激しく気力減退中ゆえごく簡単に。

『三輪』
シテ　佐野　萌
ワキ　工藤　和哉
間　深田　博治
笛　一噌　幸弘（噌）　小鼓　幸　信吾（幸）　大鼓　亀井　実（葛）　太鼓　金春　國和（春）
地頭　三川　泉

　シテは足の具合が思わしくないようで、下居の際は小さな枕のようなものを当てていた。この方の常であるように、終始淡々としていた。地謡は地頭三川泉師、副地髙橋章師という鉄壁の布陣で聴き応え抜群。硬質の宝石を柔らかい布でふんわりと包んだような感触。
　神楽の笛には陶酔感が不可欠だと思っているが、いくら段が進んでもまるでなし。音としては美しいが、それ以上でもそれ以下でもない。ここまで何の情感も持たないのはある意味凄いが、能の囃子としては疑問。今更言うまでもないが、本当に指し指が好きなのだなぁと思った。

狂言　『栗焼』
シテ　野村　万之介
アド　深田　博治

　万之介師の背中がまた丸くなったようで寂寥観を覚えるが、この方の、観ていて余計な緊張感を煽らない、穏やかで温かい雰囲気は貴重だと思う。「栗」という言葉が発せられるたびに、その質感、味までが蘇ってきた。よい時間だった。

能　『花筐』
シテ　近藤　乾之助
子方　近藤　颯一郎
シテツレ　野月　聡
ワキ　高井　松男
ワキツレ　井藤　鉄男、梅村　昌功、則久　英志
笛　中谷　明（森）　小鼓　亀井　俊一（幸）　大鼓　安福　光雄（高）
地頭　今井　泰男

　シテはその登場から終曲まで緊張感を保ち続け、漫然としたところが全くなかった。前場の手紙を読む下りは一言一言噛みしめ味わっているようで、そんなところからいかに皇子を大切に思っているのかが察せられた。後を追って行こうと決意する姿は激情に駆られたというよりは、冷静な判断と強い意志の表れによるもののよう。
　颯一郎君は見るたびに背がのびて、今やワキ方と同等かそれ以上。その風貌から初冠に狩衣姿がよく似合い、天皇という役柄にぴったりだった。
　後シテは狂女となることが皇子を追いかける唯一の手段であると覚悟し、心情の極端な不安定さは覗かせず、あくまでも誇り高く、美しい。だから花筐を打ち落とされたときに表出する怒りは、静かなものなのだろう。李夫人の舞曲は劇中劇を観ているような臨場感があった。
　この方の昨今の舞台は全て充実していて嬉しい限り。できるだけ観たい。
　空席だった隣席がこの一番のみ埋まり、そしてその人は落着きがなかった。殊更じっくり観たい一番に何故。

能　『是界』
シテ　亀井　保雄
シテツレ　亀井　雄二
ワキ　野口　敦弘
ワキツレ　吉田　祐一（代演　井藤　鉄男）、野口　琢弘
間　竹山　悠樹
笛　寺井　宏明（森）　小鼓　住駒　匡彦（幸）　大鼓　亀井　広忠（葛）　太鼓　徳田　宗久（観）

　消化試合を観るような気持ちになっていたが、やはりこれといって見所なく終曲。太鼓は少々力みすぎなのではないかと感じた。笛はこの方と言い弟さんと言い、至極まっとうなのだが、父君は・・・と思う。大ベシはなかなか良かった。

こぎつね丸