観能雑感
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2006年10月01日(日) 二十五世観世左近十七回忌 秋の追善能 

二十五世観世左近十七回忌 秋の追善能 観世能楽堂 AM11:00〜

 本当は2日目に行きたかったのだけれど、予想どおり早々にチケット完売だったため、この日のチケットを購入。座席は中正面最後列、ガラスで仕切られた席のすぐ前で、ずばり観難い。笛方がちょうど目付柱に隠れる位置。
 2日続けての観能は体力的に苦しく、体調もいまひとつでウトウトしがちだった。そして例のごとく、環境が悪かった。こちらは肘掛をまったく使っていないのにもかかわらず、何度も隣席の男性の腕が触れて気持ち悪いことこの上ない。第一気になる。鬱陶しい。さらにその男性は常に口の中でクチャクチャピチャピチャというような音を立て続けていてやはり耳障りで気持ち悪い。腕に関しては本当に迷惑だったので苦情を言おうかと思ったが、休憩時間中番組片手に女性職員に大声でなにやら文句を言っている姿を目撃してしまい、また神楽の最中に小鼓、大鼓を打つ真似などしていてどうも尋常な雰囲気ではなく、逆ギレされたら周囲にも迷惑が及ぶため、ひたすら耐えることにした。途中で帰ろうかと思ったものの、最後まで観続けた。貧乏性、ゆえに。思えば、別会関係で良い環境で観られたことはほとんど皆無と言っていい。あああ。
 記憶が曖昧なため、断片的な記述に止める。

連吟 『蝉丸』道行

能 『清経』 恋之音取
シテ 観世 恭秀
ツレ 藤波 重孝
ワキ 工藤 和哉
笛 松田 弘之(森) 小鼓 鵜澤 洋太郎(大) 大鼓 亀井 実(葛) 
地頭 木月 孚行

 小鼓は当初鵜澤速雄師の予定だった。
 ワキが登場してから退場し、シテが登場するまでが何故か妙に重く、ここまでで少々ぐったり。曲趣を削ぐことになるように思う。
 シテの出立は肩上げだった。武人と言うには程多いメンタリティの持ち主である清経なので、個人的には常の片脱ぎの方が優美で似つかわしいように思う。笛の音に誘われるというよりは、それを懸命にたぐり寄せているよう。心を閉ざしてしまった妻の前に実体化して登場するのはかなりの困難を伴うようで、彼女との唯一の接点がこの笛の音であるように感じながら音取を聴いた。この音を聴けただけでも、入場料を払う価値があった。
 その後は特にどうということなく進んで終曲。なんとなく物足りなかった。

狂言 『泣尼』
シテ 大藏 彌太郎
アド 大藏 義教、大藏 千太郎

 千太郎師が尼の役。年老いてなお逞しい生活力を有する尼は若い役者が挑むには壁が厚い模様。東次郎師の名演を観ているので余計そう感じるのかもしれない。

能 『三輪』白式神神楽
シテ 観世 銕之丞
ワキ 宝生 欣哉
間 善竹 十郎
笛 杉 市和(森) 小鼓 曽和 正博(幸) 大鼓 柿原 崇志(高) 太鼓 観世 元伯(観)
地頭 野村 四郎

 一番観た時点で大分消耗しており、あまり記憶がない。
 作り物は笛座前に斜めに置かれた。後シテの装束は白一色で烏帽子なし。神楽、神舞ともに常より短かったような気がするが、定かではない。

仕舞
『道明寺』  杉浦 元三郎
『釆女』キリ  観世 清和
『松虫』クセ  梅若 吉之丞
『野守』  浅井 文義  
『吉野天人』  観世 三郎太

 まとまって空席があった中正面後列が仕舞が始まる前に着飾った子供と親たちで埋まった。宗家のご子息の「ご学友」であろう。そしてすぐにまた空席に。

能 『恋重荷』
シテ 谷村 一太郎
シテツレ 高橋 弘
ワキ 村瀬 純
間 大藏 吉次郎
笛 藤田 次郎(噌) 小鼓 観世 豊純(観) 大鼓 佃 良勝(高) 太鼓 金春 惣右衛門(春)
地頭 武田 志房

 ほとんど記憶なし。シテのハコビがべったりしていて気になったのと、惣右衛門師が普段ならば出番まで後見に座らせておくところを最初から座っていたことくらいを辛うじて覚えている。

 観能においては殊更の静寂と集中が必要であるが、それを確保するには周囲の環境もまた重要である。はずれが続くと気が滅入る。他のジャンルではここまでトホホな目にあったことがない。今日も負け戦。


こぎつね丸