観能雑感
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2005年10月23日(日) 喜多流職分会 10月自主公演

喜多流職分会 10月自主公演 喜多六平太記念能楽堂 AM11:45〜

 未見の曲があるのでチケット購入。中正面後列脇正面寄りに着席。見所はほぼ埋まっていた模様。
 近頃不眠傾向にあり演能中にどうしようもなく眠くなってしまった。そして何故か見所が異常に寒く、足元から冷気が忍び寄ってくるほど。この季節に何故といぶかりたくなるくらい冷房全開。寒気がおさまえらず。
 今回はごく簡単に記すに止める。

仕舞
『兼平』  高橋 吟二
『錦木』  友枝 雄人
『融』  内田 成信

能 『放下僧』
シテ 粟谷 充雄
シテツレ 井上 真也
ワキ  森 常好
アイ  三宅 近成
笛 内潟 慶三(森) 小鼓 住駒 匡彦(幸) 大鼓 柿原 光博(高)
地頭 粟谷 能夫

 後シテが橋掛りでアイから敵の名前を聞いた際、ツレの弟に合図するのに振り返りつつ杖を突いていた。上掛り二流では振り返らず杖を突くのみだったように記憶している。とくにどうということもなく、なくなんとなく時間が過ぎて行った。

狂言 『蚊相撲』
シテ 三宅 右近
アド 高澤 祐介、前田 晃一

 右近師の大名が驚いた時の様子や大きな団扇で蚊を翻弄しているときの姿が、無邪気に一生懸命という感じで自分には好ましく思える。

能 『住吉詣』
シテ 塩津 哲生
子方・随身 狩野 祐一、友枝 雄太郎
シテツレ・光 源氏 狩野 了一
シテツレ・惟光 金子 敬一郎
シテツレ・立集 塩津 圭介、佐藤 寛泰、松井 俊介
シテツレ・供女 佐々木 多門、大島 輝久
アイ 殿田 謙吉
笛 一噌 仙幸(噌) 小鼓 亀井 俊一(幸) 大鼓 柿原 崇志(高)
地頭 香川 靖嗣

 惟光役の金子敬一郎師が好演。他の立衆より際立った存在感と源氏の側近であるという品位を保っていた。下居姿も美しい。紺の大口と縹の長絹がよく似合っていた。観世流では子方の随身の他に童子がいて、舞を舞うが、喜多流では随身二人の相舞。中之舞三段をきちんと揃って舞っていて、可愛らしかった。
 シテの面は小面だと思われるが、角度によっては少々不気味な印象で、役柄に相応しいとは個人的には思えず。序之舞は見事と思いつつ、眠気に勝てずうとうと。源氏一行を見送り、常座で留め。

仕舞
『歌占』キリ  内田 安信

能 『項羽』
シテ 粟谷 明生
ツレ 粟谷 浩之
ワキ 高井 松男、梅村 昌功
アイ 高澤 祐介
笛 一噌 幸弘(噌) 小鼓 久田 俊一郎(高) 大鼓 亀井 広忠(葛) 太鼓 三島 卓(春)
地頭 友枝 昭世

 脇能と同様の構成の切能。前シテは船頭。作者不明。今回初見。
幸弘師の笛、音色、音量ともに申し分ないのだが、舞台背景を反映しないのは相変らず。というより、さらに進行しているよう。舞台上では草刈男が仕事を終えて帰ろうというところで、時は夕暮れ。心無いと思われている草刈男が花を手にしているという、うらぶれた中にも微かな華やぎがある、そういう場面だが、音だけ聴いていると正に今昼日中でこれから仕事に精を出そうという印象を受ける。物の感じ方は人の数だけ存在するので異なる感興を抱く方も当然おられると思うが、すくなくとも私にはこう聴こえた。この方、これからどこに行こうとしているのだろうか。
 船の作り物はなし。老船頭は本性を明かして中入。
 正先に一畳台が出され、後ツレ、シテが出端で登場。朱の縫箔に紫の舞衣。面は神秘的で寂しげな印象。増か?天冠には揺簪が数多く付いていて鬘は両側に垂髪を残していた。後シテは黒地の金の文様の半切、同じく黒地の厚板と法被。黒頭、唐冠。面は判別できず(後に怪士と判明)。ほとんど黒頭にかくれていたが、僅かに見えた顔は精悍で、若くして散った項羽に相応しいと思った。ツレが一畳台から降りて虞氏が身投げした様を再現。続いてシテが一畳台に登り、虞氏を探す様子が痛々しかった。最後に奮戦する様子を再現し、幕前で留め。あっさりした構成で深い趣には欠けるが、飽きずに面白く観られた。

 体調が整っていないと舞台は楽しめない。それにしても寒かった。


こぎつね丸