観能雑感
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| 2003年11月19日(水) |
朋あり、遠方より来たる |
この度、縁あって練習用の能管と教則ビデオを格安で入手した。 もともと楽器の演奏が好きで、能の中でも特に囃子に対する興味が深く、状況さえ許せば笛を習いたいとずっと思っていた。そもそも私は自分の声、姿形を通して直接表現することに対し抵抗が大きく、楽器を通してという形でないと厭であった。謡が基本なのは重々承知してはいる。さらに能の囃子は掛け声が重要であり、声を出さない楽器となると笛しか残されていないのであった。勿論、笛の演奏そのものに強く引かれたのが一番大きな理由である。 習いたいとは思えども、賃貸住宅暮らしでは思いきって練習などできないし、そもそも貧乏一人暮しでは師事するにあたっての様々な負担に耐えられそうにもない。せめてカルチャーセンター程度の出費ですむならば考えなくもないのだが、どちらにしても肝心の舞台を観る回数に影響しそうである。 そんなこんなで笛は「遠くにありて思うもの」であったが、ついに我が手の中にあるものとなった。とあるサイトの管理人様が本管を入手したため売りに出したものであったが、まるで私のためであるかのような条件で、飛びついてしまった。何せ一管なのでタイミングを逃せば他の人のものになっていたはずである。縁とは不思議なものである。 もし笛を習えるようになったらまず購入するのはプラ管だろうと思っていたが、今回入手したのは竹の合板をくり貫き、人工漆で塗装したものである。私には勿体無さ過ぎるくらいである。 周囲を気にしつつ、息を吹き込んでみた。口の当て方や、唇の形、息の強さ等すべて手探りである。なかなか鳴らない。そのうちに「ピー」という高い音が出た。次に全ての穴をふさいで音を出してみる。手が極めて小さく、指も短く、特に小指が短い私には簡単とは言い難いが届かないこともない。しかし音は出ない。当面は穴を全てふさいだ状態で安定した音を出せるようにすることが目標だろうか。 唱歌も覚えなくてはならないし、西洋楽器とは異なるアプローチが必要であるが、それもまた楽しみたい。独学では良い事は何もないのは解っている。可能ならば松田弘之師に「弟子にして下さい!!!えっ?パン???買ってきますとも!!!!!(と言いつつダッシュ)」(明かな誤解)と言いたいのだがそうもいかず…。既に書いたように練習も思いきってはできずで少々哀しくもあるのだが、手の中の存在は大変いとおしい。 すぐに大きく前進することは無理でも、これからの人生、常に傍らに置いておきたい大切な友人である。譲って下さった方に感謝したい。
全く余談だが、私は野村万之丞師にパシリをさせられる夢を見たことがある。
こぎつね丸
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