青い物語
由良



 twilight(聖剣LOM) 続

水面のようなゆらゆらとした青く暗い空間は
勝敗が決すると、まるで全てが幻だったかのように、一瞬で跡形もなく消えた。
私は手短な太い枝に座り込んで、彼はその隣で幹に背をもたせ掛ける。
まるではじめから決まりきっていたことのように、私達は聖なる大木の頂きで朝日を待った。
女神の影は消えた。
これから、儀式が始まる。




「………お前らしくなかったな、戦闘の最中に意識を投げ出すなんて。」

彼は己の傷付いた片腕をぼんやり眺めながら呟いた。
もう血は止まったと言っていたが、赤黒く汚れたその傷は見るからに痛々しい。
もっとも、今までお互いに生死の境をさまよい、負った怪我に比べればそれこそ笑い飛ばしてしまえるほど些細な傷ではあるのだが。

「最後の最後に、傷を負わせてごめんね。」

「お前はいつも最後のつめが甘いんだよ。」

「……そうだね。」


女神の化身の放った一太刀は見えていた。
眼前に広がる閃光。
危ないところだったが、自分なら避けようと思えば避けれるはずだ。
そこまで一瞬のうちに判断できるほど、冷静だった。
そして冷静に
このまま避けなかったら、自分はどうなるのだろうと疑問に思った。
自分は死ぬのだろうか。
隣にいる彼も死ぬのだろうか。
女神の化身はどうなるのだろうか。
世界はどうなるのだろうか。
ギリギリのところでかわして、なんとか生き延びて
そして女神の化身を倒せば、世界は白紙に戻る。それは明白なことだ。
だが、もし自分がいなければどうなる?
女神の化身が倒されなければ、世界の運命は変わるのだろうか。
新たな選択が、見つかるのだろうか。
もし、この世界に存続の道が許されるというのなら
自分の命を失うことくらい、安いものだと本気で思った。


「夕日は見れなかったな。」

「あぁ……そうね。でも、朝焼けも夕焼けも、空が赤く染まることにはかわりないわ。」

「赤いことに何か理由が?」

「ただ、似ているというだけよ。」


馬鹿野郎ッ!
敵が私の胸を貫かんとする瞬間、そう怒鳴られた気がした。
幻覚かもしれないが、確かに頭に響いた。
傍目にはぼぅっとしていたかもしれない。
でも、私はちゃんと敵の攻撃が見えていたし、死の覚悟もできていた。
だが、最後の決戦に連れてきた相棒は、私が思っているほど私の命を軽くは扱っていてくれなかったらしい。
すぐ目の前で、私をかばった格好になった彼の腕に敵の太刀が食い込んだ。
肉を裂く厭な音を聞いた。
そして、私の目は女神の化身の心臓をえぐる彼の剣をとらえ
耳をつんざく断末魔の悲鳴を聞いた。
同じだ。
あの時と同じことを、また繰り返している。
もし、彼があの時私を助けなければ
もしかしたらほんの少しでも結末は違っていたかもしれないのに。


「……だいぶ明るくなってきたな。」

「どの瞬間の空を朝焼けって言うのかしら。」


昨日と、明日が、交じり合う。
一日の終わりと始まりと。
世界の終焉と誕生。
物語の終章、そして序章へ。
ゆっくりと昇る太陽が、平坦な世界を照らしだした。
何もない地平。
昨日まであった森も、街も、人々の笑い声も、剣が打ち合わされる音も
すべて朝日に飲み込まれ、この世界には何もなく。
ただ、太陽だけが昇っていく。


「ねぇ……」

滲んだ視界の中、隣に立っているはずの彼の姿はおぼろげで儚く映った。
瞬きをしても手で拭っても、おそらく彼の輪郭はもうハッキリとは見えない。

「ちゃんと、朝日、見えてる……?」

陽光が煌いて、目の前が真っ白に塗りつぶされる。
彼が見えない。
それでも、確かにそこに居るはず。薄れゆく中、きっと微笑んで。
視界の端に、一人目の草人がフワフワと降りていくのをとらえた。
たんぽぽのわたげのように、風と遊ぶように、無邪気な笑顔で。

食い入るように見つめても、もうそこには完璧に彼の姿がなかった。
目の前に広がるのは、広大な何もない大地と、盛大に降り注ぐわたげたちと
だんだんと燃えていく朝焼けの空。
一日の始まりも、その終わりも
同じ色に染まっていく永遠の摂理。
どうやら、それは世界も同じことらしい。

はじまりもおわりも

見上げる空はいつだって

twilight


















                        END
_________________________

結局何が言いたかったんですか、と尋ねられるとほとほと困ってしまう。
本当に言葉が出てこなくて厭になるね。
零れ話どうしようかなー…一応出すかなぁ。もったいないし。爆
意味不明ですな。わー

2003年11月12日(水)
初日 最新 目次 HOME