スロには、ポストイナという鍾乳洞がある。 古くから、この国の一大観光地となっていたそうで、 噂によると、洞窟内には当時の名残で、 シャンデリアなんぞもぶらさがっているらしい。
…おもしろそうじゃないですか。
スロには数度来ているコージ苑だが、 実はここ、まだ行ったことがなかった。 七味屋氏も勿論未体験、ちょうどいいからと、 再びレンタカーに乗って、 再び日帰り国内旅行へ。
今日のスロは、絶好の鍾乳洞日和。 つまりは、天気が悪くて寒かったってことだ。 もはや勝手知ったる、といった感のある高速にのり、 目的地へ向かう。
実は、正確な行き方を知らなかったので、 たどり着けるかと少々不安だったのだが、 そこはさすがにスロのドル箱観光地、 高速の出口から、これでもかというほど看板が出ていた。
鍾乳洞内の見学はツアーになっているため、 時間が決まっている。 12時からの回をねらって行ったコージ苑達、 結構ぎりぎりで到着。 入り口には、既に長蛇、とはいわないまでも、 アオダイショウぐらいの列ができていた。
ゲートが開き、通路を進むと、 駅のホームのような場所に出る。 メインの見所までは、トロッコに乗って行くのだ。 わあい、コージ苑こういうの大好き。 しかし待て、昨夜ぶっひー嬢は、 「怖いの好きなら、右に乗ってね」と言っていた。 コージ苑、ジェットコースター苦手なんだけど、 まさかこれが猛スピードで走るわけはないだろうと、 大して考えもせず、右側に乗り込んだ。
走り出して、ぶっひー嬢の言わんとすることが分った。 予想通り、スピードはそれほどでもないが、 線路が岩肌ぎりぎりに設置されているので、 トンネル状になった場所を抜ける時に、 頭すれすれを、石灰岩がかすめてゆくのだ。 おお、これは怖いぞ。 コージ苑は、世界標準で見ると小さい方だが、 それでも思わず首をすくめてしまう時があった。 いわんや、欧米人をや。
ツアーの出発点には、各国語で書かれた看板があり、 観光客は、自分が理解できる言語を選ぶようになっている。 選択肢はスロ語、英語、ドイツ語、イタリア語。 (…だったと思う、たしか) コージ苑、自分が英語しか分らないので、 迷わずそっちへ行ってしまったが、 もしかして七味屋氏にはドイツ語の方がよかったかと、 後になって気づいた。 つくづく自分のことしか考えていない奴である。
しかし、ふと「ドイツ語」の看板の方を見ると、 なんだなんだ、あの人数は。 団体観光客だろうか、客の半分はドイツ人である。 過日、イタリアの大物政治家がドイツ人を評して、 「どこに行ってもドイツ人が観光している」と言ったのは、 あながち間違いではないようだ。 でもさあ、それを言ったら日本人もアメリカ人もじゃないか?
閑話休題。 ガイドのおじさんについて、いよいよツアーの始まりである。 といっても、個人的にはコージ苑、詳細な説明は不要だった。 もちろん、詳しい話が分れば数倍楽しいのかもしれないが、 鍾乳洞の大きさと、その景色は、見ているだけで十分面白い。 何年も何年もかけて、少しずつ形作られた鍾乳石は、 実にさまざまな色や形をしている。 この鍾乳洞の中でも、特に有名なものには、 「スパゲティ」とか「ソフトクリーム」といった名前がつけられている。 実際に見てみると、なるほどそう言われれば、という形。 どんな偶然が重なれば、こんなものができるんだろう。 月並みな言葉だけど、自然って不思議、なのだ。
ツアーの終りに、奇妙な動物を見た。 一見トカゲのような、白くて細い動物は、 サンショウウオの一種らしい。 光のない鍾乳洞内での生活に適応した結果、 目は退化し、色素が失われてしまったのだそうだ。 水槽に入れられ、ライトアップされたサンショウウオ君は、 眠っているのか弱っているのか、 時折ふわりと動くだけだった。 話によると、彼らを数ヶ月光に照らしていると、 実際弱ってしまうばかりではなく、色も黒ずんでしまうので、 2ヶ月程度で新しいのと入れ替えるんだそうだ。 人気者も大変である。
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こりずに山道を抜けて帰る。 自然公園になっている山を越えたのだが、 そのルート、ほとんどが未舗装の砂利道。 カーブの時に、微妙にすべるのが、 ポストイナのトロッコとは比べ物にならないほど怖かった。 コージ苑は、鍾乳石で頭を打つのも、 車ごと谷に落ちて血だらけになるのもごめんである。 平地に出た時には、心底ほっとした。
今回の教訓。 スリルは、忘れた頃にやって来るのである。
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