見つかりました、運命の部屋。
朝早く、ティンカーベル嬢から電話が入る。 頼んでおいた不動産屋では、新しい物件はないとのことで、 心配した彼女は、広告雑誌をチェックしたんだそうだ。 この雑誌、週2回発行されるもので、 土地から部屋から中古携帯電話まで、 様々な「売ります貸します」がギッシリ掲載されている。 彼女は、その中の2つの物件に目をつけたというわけ。
午後イチで、問題の部屋を見に行く。 雑誌に掲載された物件を押さえたかったら、 発行日の午前中には連絡しないと間に合わないのだそうだ。 …世の中、そんなに多くの人々が一時に部屋を借りるんだろうか。
2つの物件は、同じ地区の同じアパート群にあった。 大学から歩いて5分の所にあるその地区は、 中心街に近い割に緑が多くて静かな環境だということで、 ちょっとばかし裕福なご家庭に人気の町。 従って、そこで貸し物件が出るのは珍しいんだそうだ。
1つ目は、川沿いの道から一本入った場所。 エージェントが待ちかまえていた。 アパートは築20年。 古い建物の多い欧州では、これでも新しい方である。 案内された部屋は、最上階のワンルーム。 窓が大きく南向きなので、日当たりの良さがまず目に付いた。 いわゆる「屋根裏部屋」なので、 普通のものよりも若干天井が高く、 その特性を活かしてロフト付きにしている。 面積は、全てあわせて30m2。 「一階部分」だけを見ると、はっきり言って相当狭い。 日本のワンルーム並みである。 それでも、設備その他を考えると、 少々高めの家賃も、相場からするとお値打ち価格である。
2つ目の部屋は、現在改装工事中。 建物こそ違うものの、最上階にあるところや部屋の構造など、 殆どが前の物件と同じ条件。 しかし、気合を入れて改装しているのか、 ロフトへ登るのに、手すり付きの螺旋階段をつけたり、 キッチンには20本分のワイン棚があったり、 果てはエアコンまでついているというご丁寧さ。 それだけに家賃も高い。 ティンカーベル嬢が交渉してくれたのだが、 1EURも値下がらなかった。
確かに、2つ目の部屋は素敵だった。 しかし、給料の6割以上を「住」に費やすのはごめんだ。 いくらきれいな部屋に住んでいても、 食事や遊びを限界まできりつめて、 ぎりぎりの生活をするなんて、コージ苑から見ると馬鹿げた話。
ということで、1件目の物件に決めることにして、 エージェントに連絡の電話を入れた。 交渉の末、洗濯機とベッドをつけてもらえることになり、 正式な契約を今週中に結ぶように手配した。
やれやれ、これで住所不定のまま仕事を始めなくて済むのだ。 何より、住居契約がないと就労ビザがおりなかった。 税金の問題があるとかで、大抵の家主は契約書を書きたがらず、 それが部屋探しを困難にしていた原因でもあった。 今回借りることになった部屋の持ち主は、 親戚が日本で働いているとかで、 コージ苑に貸すことや、契約書の点では異存はなかったらしい。 もしかして、コージ苑けっこうラッキー?
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歴史探検隊『人は権力を握ると何をするか』 文春文庫 単なる雑学本として読んでみた。 権力者というのは、わがままが許されてしまう、 というか、わがままを通してしまう。 一般人であれば、周りから変態呼ばわりされて終わるようなことも、 王様となると止める人間がいないので、始末が悪い。 振り返って我が身を見ると、 コージ苑は決して禁欲的な生活を続けられる人間ではないので、 権力などというものは持たないに限るな、と思った次第である。 (それ以前に権力を持てるようになる要素がないのだが)
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