今日もまた部屋を見に行った。 問題の物件、立地は最高である。 市場のすぐ近くにあり、中央駅へも歩いて行ける。 家賃も条件内におさまる。 大学に通うのも徒歩圏内。 窓も大きく、眺めも良い。
しかし、自分でも不思議なほどに気が乗らない。 後でつらつら考えてみるに、 原因はあの部屋の「気」だろう。
といっても、別にコージ苑がオカルト趣味なわけではない。
そこには、家主の母親が長年住んでいたそうだ。 そして部屋は、昨日空いたばかり。 …と聞いた瞬間、「『空いた』ってつまり…」などと思ってしまったが、 何が原因にせよ、そこは問題の本質ではない。
ある人が長い期間住んでいた部屋には、独特の雰囲気が漂っている。 それは、まるで「今ちょっと留守にしています」、 とでも言いたげな、自らの存在を主張する空気である。 コージ苑が知るはずもないおばあさんの姿が、 ソファやら風呂やら台所やら、 果ては皿の一枚一枚にうつしだされるような、 そんな「気」を、この部屋は持っていた。 そしてコージ苑には(仮にここに住むとして)、 その「気」を塗り替えられる自信も気もないのだ。
気に入った物件というのは、中々見つからないものだ。 まあ、来週があると気楽に考えて…いたはずが、 やはり気にかかっているのか、寝付けなかったコージ苑だった。
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眠れない時は、潔くあきらめて本を読むに限る。 お茶つきで。
真保裕一『震源』 講談社文庫 気象台から始まる、男ばっかりのハードボイルド。 きっと次のページでは、と期待してめくっていたら、 わくわくするヒマがないままに終わってしまった。 しかも、最後の最後で主人公が誰だかわからなくなってしまったという、 履歴書の趣味欄に「読書」と書く人間にあるまじき失態。 なぜここまでガックリきたかというと、それは多分、 裏表紙の「事件の裏に渦巻く国家的陰謀!」というのに、 徹底的に期待を持ってしまったものと見える。 こういう人間がCDの「ジャケ買い」とかするんだ、きっと。
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