出向コージ苑

2003年05月10日(土) 昔々

伝説の英雄「ラーチプレイシス」の作者の博物館へ日帰り旅行。

博物館は、R市からD川沿いに1時間程行った所にある。
ここ数日、急に春めいてきたL国の風景を楽しみつつ進む。
天気も良くて、今日は本当にドライブ日和。

博物館の前で、年配の女性二人が笑顔で待っていた。
白髪のおばあちゃんは博物館員、
もう一人の、少し若めの女性は通訳。
外を歩きながら、伝説の舞台となった様々な物について、
思い入れたっぷりに解説をしてくれた。

英雄ラーチプレイシスの物語は、
L国のみならず、欧州を中心として、世界各国に知られている。
何と、以前日本でも本が出版されていたそうだ。
出版元は講○社で、子供のための文学全集物の一冊。
博物館には、今は相当の貴重品となったその本が納められている。
今回、特別に読ませてもらった。

何せ時間がなかったので、その本を流し読みしたのと、
D川を見下ろす絶好の場所で、
博物館員のおばあちゃんが物語ってくれたところから知った、
英雄の物語はこんなもの。

※※※※※

英雄ラーチプレイシスは、熊を母に持つ、いわゆる「半クマ半人」。
この設定だけで、北国の物語のニオイがする。
彼は母親ゆずりの怪力を持つ青年に育った。
ある日、素手で暴れ熊と戦い、
その口を真っ二つに引き裂いている彼を目撃した男性によって、
ラーチプレイシスは人間の社会へとやって来る。

世界に無数ある「怪力の英雄」譚と多少違うのは、
彼が文武両道を追求しつづけたという点。
L国を狙う輩と、その怪力で戦いつつも、
彼は古代から伝わる知識を自分のものにしようと、日々勉学に励む。
つまり、バカ力だけの阿呆ではなかったということだ。

知性を重要視するラーチプレイシスの性格は、
妻となる女性の選択にも表れる。
この物語に登場する女性は、主に2人。
一人はこの上ない美貌を持ち、
しかしそれ故に悪事に染まってしまう女性。
もう一人は、幼少の頃から最高の教育を受け、
知的な美しさを身に付けた女性。
前者は後に改心するし、
知性もゼロというわけではなさそうなのだが、
ラーチプレイシスが伴侶に選んだのは、
後者のインテリ派女性だった。

長い物語の中で、彼は様々な人間と出会い、戦うわけだが、
その詳細はここでは省略するとして、
彼の最期はこんな感じ。

ドイツの十字軍がL国にやって来る。
この国を征服しようとする彼らにとって、
怪力の英雄の存在は、当然目の上の瘤。
彼らは、何とかしてラーチプレイシスを排除しようと、
彼の城にやってくる。

「聞けばとんでもない怪力だと言うが、その証拠を見せろ」
と、十字軍は彼らの中で一番の武闘派「黒い騎士」と、
ラーチプレイシスとの試合を申し込む。
最初は断った英雄だが、
嘘つき呼ばわりされると、しぶしぶ試合を受ける。

実は十字軍(この物語の中では相当の悪役)、
事前にラーチプレイシスの弱点を掴んでいたのだ。
英雄は母熊から怪力を受け継いだが、
その力の源は、これも母親似の「耳」。
(ちなみにL国人、ホッケーの試合を応援する時などに、
この「クマ耳」を模した帽子をかぶるそうだ。)
そしてその耳を切られると、彼の力は半減する。

黒い騎士は、英雄の片方の耳を切ることに成功する。
これで、本来ならば勝つはずの戦いが、互角になってしまう。
戦いの中でもう一方の耳も切られながらも、
ラーチプレイシスは黒い騎士もろとも、D川へと沈んでいった。
今でも、夜に船で川を渡っていると、
永遠に戦いを続ける彼らの幻が見えるそうだ。

※※※※※

そんなわけで今日一日、この物語にかぶれてしまった日本人は、
その日の遅い昼食で、
英雄の名のついたビールを飲んだのだ。


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