今日はY先生宅にお泊りする予定である。 夕方、買物をしようと待ち合わせた。 場所は市内某ホテルのロビー。 少々早く着いたコージ苑がキャッシュコーナーで引き落としをしていると、 背後に感じる熱い視線。 ひったくりか?とアヤシミつつふり返ると、 蝶ネクタイに緑の帽子をかぶった初老の男性。 いくら何でもこんなに目立つひったくりもないだろう。 L国語で話し掛けてきた彼が指差す方向を見ると、大きな肘掛け椅子と足置き台。 彼は靴磨き屋さんであった。 いいよいいよと断ったのだが、「プレゼントだから」と譲らない。 どうやらコージ苑の傷んだブーツが、 彼の職人意識をメラメラと燃え立たせたらしい。 半ば押し切られる形で椅子に座る。 丁寧に磨いてもらった後のブーツは確かに美しかった。 些細な事だが、だからこそ何となく嬉しくなってしまう。
Y先生の買物は、明後日会う彼へのクリスマスプレゼント。 ベネトンで物色したものの、これはというものが見つからない。 プレゼントを買う相手がいない気楽なコージ苑は、 セールで安くなったスカートを見つけて試着などしていた。 と、カーテンの向こうに聞きなれた足音。 Y先生がピンクのニットを持って入ってきた。 「決まらへんからさあ、っていうかこれ着てみるわ」 文の前半と後半に全く脈絡が感じられないが、 結果を言うと彼女は試着したセーターを、 図らずも自らへのクリスマスプレゼントとしてしまった。 そしてコージ苑も、スカートを買ってしまった。
女の買物は、得てしてこういうものなのかもしれない、と言えるかもしれない。 …よね?
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