月のシズク
mamico



 モンド鍋

足掛け一年計画だった「モンド鍋」を、今宵決行した。

モンド鍋というのは、別にモツ鍋とかあんこう鍋の新種というわけではなく、
お世話になっている(単に行きつけの)mondoという名のメキシカン・バーの
スタッフと鍋をした、という意味です。期待しちゃった方々、すみません。
鍋の中身は、オーソドックスな味噌煮込みでしたので、悪しからず。

私がmondoに通い始めたのは、かれこれ4年も前である。
最初はシックはダイニング・バーだったモンドも、数年前からはメキシカン
中心の陽気な酒蔵になりました。今宵、ご招待したのは、てんちょさんと
女性バーテンダーのみやっち。それに生粋の男ともだちのアサヲカの三人。
モンド・メンバーのふたりは、オープニングからのスタッフさんで、私が
足を踏み入れたのは、ちょうど吉祥寺にオープンして間もない頃だった。

「そりゃね、若くして店を持ったわけだから、いろいろ大変なこともあったよ。
 でも、マミゴンやアサヲカさんみたいに、気持ちよーく呑み喰いしてくれる
 お客さんが来てくれるから、よっしゃ、って思えるんだよねー」

すっかりくつろいだ雰囲気のてんちょさんが、ワインを次々空けながら
感慨深そうに云う。やや人見知りがちのみやっちも、嬉しそうにうんうん
と頷く。いや、こちらこそ。いつもふらっとドアを押せる場所を作ってくれて
ありがとう、と心の中でおもう。お客さんも、感謝してるんだよー、と。

一期一会、という有名すぎるくらい有名な格言がある。
そのとき、そのときの出会いを大切にするという意味。私は基本的に気まぐれ
で人にあまり優しくない(と、自覚している)。でも、ひとまず相手が腹の内を
勝ち割って向き合ってくれるとわかると、とことんまで付き合ってゆく。

誤魔化しが効くと高をくくる人もいるし、いい人を上手に演じられると思い
込んでいるひともいる。でもそんな嘘っぱち、云っちゃナンだが、人はすぐに
見破れる。言葉の端々、振る舞いの一挙一投足の演技は、欺瞞でしかない。
人は、自分が思っているより、ずっと用心深く、相手をみているのだ。

「ごちそーさま。じゃ、次はモンド・カレーで」
三人が満足しきった(そして、やや千鳥足で)玄関を後にする。
とっ散らかったダイニングを振り返り、「よっしゃ、洗い物をしますか」
と腕まくりした私は、けっこう、こんなお人好しな自分を気に入っている。



"mondo"は仏語で「世界」という意味。お店は、吉祥寺ロフト前のB1です。

2004年01月26日(月)
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