月のシズク
mamico



 チョコレート味のちんすこう

3ヶ月半ぶりに髪を切った。
パサパサの毛先を細い指でつまんで、担当のアサコさんはすこし困った顔をする。
「もっと早くきてくださいよ」と言われ、すみません、と私は言い訳をひっこめた。

洗髪中も断髪中も、わたしは話しかけられるのが好きではないことを、
この店のスタッフはよく知っている、ので、作業は無言で進められていく。

たっぷり髪をしめらせて、ぶくぶくのシャンプーを2回。
ハイライトのカラーリングを入れるので、トリートメントはなし。
泡を洗い流した後、念入りに頭皮マッサージをしてくれる。
以前「これ、気持ちいいですね」と言ったことがあり、シャンプー担当の
女の子は、ほかの人よりも念入りに、心をこめてマッサージしてくれる。
強めの指圧が頭皮を心地よく刺激する。ありがとう、を言う。

結局、10センチくらい切った。
アサコさんと相談して、いつものように前髪は作らず、レイヤーを
長めに入れて、アッシュ系のハイライトを細かく入れてもらう。
シュッシュッシュッと、耳元で切れの良い音がする。
手際がよく、それでいてとても丁寧。信頼を感じる。

できあがった髪は、顔つきを少しだけ幼くみせた。
かつて、どこかで会ったことのあるような私みたいだった。

帰り際、ドアの外の階段まで見送ってくれたアサコさんが、
「これ、おみやげです」と、チョコレート味のちんすこうをひとつくれた。
昨日まで社員旅行で沖縄へ行って来たという。寒かった、とも。
「期間限定なのでおいしいかわからないですけど」と、はにかんで笑う。
ありがとう、を言い、今度は早めに来ます、と約束する。

帰りの電車のホームには、今年もたくさんのハートマークが飛び交っていました。




2002年02月14日(木)
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