月のシズク
mamico



 Slipping the Reality

けたたましくコールが鳴り響いているとき、私はベットで夢をみていた。

友達の挙式まで時間がないというのに、私は着ていく服がなかった。
それでも髪は結い上げてあって、まだジーンズをはいている。
着付けをする時間などないのに、どうしよう、とおたおたしている夢。

目覚めの水面に近づいたとき、激しく鳴るコールは、目覚まし代わりにしている
電話の呼び出し音だと思っていた。手探りで解除ボタンを何度も押す。
コールは鳴りやまない。はたと眼を開き、それがインターフォンの音だと気づく。
来客の時間?

慌ててデジタルの数字を読むと、10時ちょうどだった。
寝過ごしたことを理解できず、鳴り響くコール音を放置したまま
ベットの中で丸くうずくまっていた。どうしたんだろう、と考えながら。

仕事や約束のある朝は、まず寝過ごすことはない。
几帳面ではないけれど、野太い神経の持ち主ではないので、必ず目覚める。
ずっとそういうふうに心身と生活を訓練してきた。
なのに、まったく記憶がない。いろいろなことを忘れている。
いったいどうしたんだろう、私は。


ここ最近、私の生活に、いや、正確に言えば私自身に少し違和感を感じる。
現実がわたしのすぐ近くで、ちょっとずつ、ずるずると滑っているみたいだ。
注意力が散漫で、ある時間のかたまりをぽっかりと喪失している。
反省も自己嫌悪も自責の念も浮かんでこない。
まったく、いったいどうしてしまったんだろう。

こういうときは、目をつぶり、耳をふさぎ、静かに呼吸しながら周囲をやりすごそう。
逃げるのではない。この手で捕まえることのできないモノどもを、やりすごすのだ。
そう、現実からすべり落ちないように。



2002年02月05日(火)
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