月のシズク
mamico



 花を活ける

初めて、お正月用の玄関の花を活けました。
これは毎年祖母の役目で、なんというか、とても大切な儀式のようなものでした。
冷たくしんとした玄関で、パチンパチンと松の枝や花を切り、確実な位置を定め
剣山に刺し、ひとつの完結した空間を作りあげる技。芸術というより、お正月を
迎えるための儀式、という表現が的確かしら。

なのですが、今年は活ける花の種類について母と祖母の間で一悶着あって(苦笑)
「わたくしはもう知りません」と匙を、いや鋏を投げてしまわれたのです。
ガラス台の上に取り残された、罪のない花々よ(苦笑)・・・で、恐る恐る
「私がやってもいい?」と聞いたところ、母は眉間にシワを立てて咎めたけれど、
祖母は「やってみなさい」とあっさり鋏を渡してくれた。言っておきますけれど、
私、お花なんて活けたことないんですよ。でも祖母から許可が出た嬉しさで、
緊張しながら生まれて初めて活けてみました。

「意味を考えなさい。この松がここに在ることの意味を。
 この千両が在ることの意味を。
 そうすると花の立ち位置はおのずと決まるのです。」

という祖母の呪文のような言葉を思い出しながら、庭木から切った松の枝を、
祖父が植えた千両とシンビジュウムを、白百合の葉を、活けましたさ。
中央後方に三本の松。それを取り囲むように両側にも枝が湾曲した松を。
千両は左奥のオアシスに背の高いものを、手前に低く水に這わせるように。
シンビジュウムは右手に・・・などなど。

ほら、わたくし、空間把握能力がゼロなので、瞬発的な想像力(よく言えば感性)
を駆使するしかない。それに失敗したら、お正月さんをお迎えできないわけです。
そのプレッシャーがいい感じに作用して、思いのほか楽しく生けることができま
した。完成品を見て、祖母が「いいわね。とてもいい」と言ってくれたときには、
心の底から嬉しかったです。いやー、日本の文化は奥が深い。
だからその深淵をのぞきたくなるし、触れたくなるんですよね。


それにしても、祖母の「意味を考えなさい」という言葉、背筋が伸びる思いです。






2001年12月31日(月)
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