月のシズク
mamico



 体温

電車に乗り込むと、小学校中学年くらいの兄と低学年くらいの妹が
ふたりならんで腰掛けていた。見ると、ふたりはぎゅっと手をにぎりしめている。
小さなお兄ちゃんが「おまえの手は冷たいな。これ持ってな、あたたかいから」
と缶の紅茶を渡す。小さな妹は「うん」とうなずき、もみじのようなちっちゃな
手で缶の紅茶を包み、それを兄のてのひらにのせた。その光景がなんだか
懐かしくて、私は小さな兄妹をしばらく熱心に見つめてしまった。

私もまだちいさかった頃、ああやって兄によく手を温めてもらった。
子供の頃から冷え性で冬になると冷たい手足をしていた私は、
祖父にも祖母にも、父や母にも、彼らの体温をわけてもらった。
母は私の手をさすりながら「かねころちゃん」と呼んだ。

語源やその意味なんか知らないけれど、ギンギンに冷えた
「かねころちゃん」は、誰かに温めてもらうことのできる
幸福な子供だと思っていた。

そして大人になった今でも、私の手足は相変わらず「かねころちゃん」です。




2001年12月19日(水)
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