月のシズク
mamico



 泣く若者

午前零時近く
家路を急いでいると、ねじれたようなうめき声が聞こえてきた。
闇に眼を凝らすと、Tower Recordの前に設置されたベンチにふたつの影がみえた。
歩くスピードを少し落として、私はなにげないふりをして前を通り過ぎる。
もちろん、耳と眼をしっかりすませながら。

うめき声だと思ったのは、男の子の嗚咽だった。
男の子といっても、高校生か大学生くらいだろう。
そばに恋人らしき女の子がぴったりとよりそって、彼のあたまをなでている。
でも男の子の嗚咽は激しくなるばかりで、押し殺した叫びのような鳴き声が
夜の空気をわずかに震わせていた。

私は、純粋な好奇心と純粋な邪心でふたりをみつめてしまった。
そして、男の子の眼が涙できらきらひかっているのを見た。
流された涙は、きっと彼の心を落ち着かすでしょう。
涙にはそんな心の鎮静作用があるから。

そして、私がいちばん知りたかったのは、そばにいた彼女のこと。
泣きじゃくる彼の髪をなでながら、彼女はなにを考えていたのか。
今はそれが、すごく、気になる。




2001年11月26日(月)
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