猫の足跡
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2003年09月11日(木) 同じカスタネットのはずなのに…

 朝、パラドールを出てバス停までタクシーで向かったつもりなのに、タクシーはセビージャに向かっている気配。慌てて途中で制してバス停へ。バスはたったの2EUROでセビージャへ行った。安いっ!旧共産圏みたいだ(まあ、あれは市電初乗り1円とかだったからなぁ)。ただし、安さには理由があって、揺れのためトランクがごろごろ車内をかけめぐってしまったのは、ちょいとお笑いだった。

 至極順調にセビージャのバスターミナルに到着。荷物を預け、再びバスに乗ってコルドバへ行くことにする。待ち時間で、セビージャのスペイン広場を散歩。回廊では、ヒターノ(ジプシー)がカスタネットを巧みに操ってぜんまい仕掛けの牛のぬいぐるみを売っている。カスタネットができないと意味無いのに、その牛が欲しくてしょうがなくなってしまう。余裕を持っていたはずなのに、半円形の回廊をふらふらしていたら、すごい時間になってしまい、最後はバスターミナルまで小走り。私らってば(苦笑)。多分、私が各都市のモニュメントがあるのをみて、バレンシア(アルファベット順だから、Vは端っこ)まで見たいと思ってしまったせいでしょう。ごめんよ〜T嬢(→とか言いつつ、「バスに間に合わないっ!!!」って容赦なく走らせる私ってば鬼畜)。

 ぎりぎりで乗りこんだバスはなかなか快適だった。本当だったら昨日行ってたはずなのに…という気持ちは棚上げにして、しばし旅を楽しむ。風景は一面荒涼たるアンダルシアの農地?荒地?(どっちなんだろう???)。う〜んっ、堪能(ってか、もういいよ、って気分。隣でT嬢は気持ち良さそうに寝ていた)。グァダルキビル川を渡り、ローマの塔を横目にして街に入ると、ようやく「ああ、まともな観光になったなあ」と感慨深い気持ちに浸ることが出来た。

 バスターミナルからはまず旧市街にバスで入り、アルカサルへ。入り口が分からずにぐるぐる壁をまわる。それにしても暑いっ!!!!市内そこらじゅうにある温度計は、気が付くと38度だの何だのと理解不能な気温を示している。空は青すぎるし(果たして雲って単語はスペイン語にあるんだろうか?)、日差しは強すぎるし。この私が、日差しを避けて日陰を選んで歩くなんて!

 アルカサル内部は案内表示が良く分からないので、とりあえずなめて進む感じ。この辺はツアーで行けば色々説明してくれていいんだけど…。アラブ風呂も、単なるほらあなって印象だしねぇ(教養がないのがばれちゃうね、笑)。その後、庭園でしばらく休息。こういうのができるのは個人旅行ならではなんだけど、両方を満たすには、私のスペイン語上達(&ツアコン力アップ)しかないのかしら。

 庭園は、噴水が涼しそうで良いけれど、それ以外はとにかく暑い。暑い。暑い!!!!日本では古臭いような黒くてごついサングラスをしていても、普通以上に空が青く美しく見えてしまうこの晴天って!

 アルカサルを出て、日陰を求めながらさまよい歩き、昼ご飯にたどり着く。T嬢がガイドブックで探してくれたレストランでお昼の定食(っていうかプリフィクスのランチね。昼定食とプリフィクスのランチ…内容は同じでもなんでこんなに字面の印象が違うんだろう?)。アンダルシア地方の名物ガスパッチョ、肉団子のメニューと、トマトスープ、メルルーサのメニューをシェアする。ちょっと良さげなレストランだけあって、赤ワインがおいしいし、サラダが別途になっていてうれしい。ガイドブックに載ってるだけあって(または観光地にあるだけあって)まわりは観光客ばかりだけど。…ってか、地元民はこんな暑さの中、出歩かないんだな、きっと。

 食後はゆっくり歩いて、その後メスキータ(旧イスラムモスク)へ。赤と白の石で作られたアーチが無限に連なっているのを見て、ちょっと伏見稲荷を思いだしながら、神の領域を堪能。それにしても、イスラム建築の彫刻技術はすごい。宝物殿にあるキリスト教のきんぴか秘宝が、成金の遠吠えに見えてしまう。

 その後散歩したユダヤ人街の「花の小道」は大したことが無かった。暑さのせいか、ろくに花も無いし、観光客がうろうろしているだけ。コルドバの観光名所なんだけどね。行き止まりになった噴水のまわりに団体の日本人がわらわらと固まっているのは、ちょっと醜悪。まあ、ツアーだから、一番キレイなところをスポット的に見に行くのはしょうがないけど。この通りにのみ日本人観光客が集中するらしく、みやげ物店に日本語の看板が並ぶ。他の所ではまるで相手にされていないだけに、「ああ、ツアーでやってきて、この一角だけでちょっとフリーになるんだろうなぁ」と思う。街をふらふらと歩くのは楽しいのにもったいない(時間と体力が必要だけど)。

 みやげ物店で、T嬢にフラメンコで良く使う赤と黒の水玉模様のエプロンを薦め、T嬢も気にいって購入しようとした。おばちゃんは「5euro(cinco euro)」と確かに言ったのに、レジで「15euro(quince euro)」と言われて断念。なんで〜?可愛いエプロンだったのに。あれで裸エプロンするT嬢はさぞ見モノだろうに…ナイスバディTシャツの次の持ちネタにして欲しかった(いや、誉めてるんだってば!ホント!)。

 そうこうしている間にいい時間。タクシーに乗りこんで18時のバスにやっと間に合わせる。タクシーのおっさんは、「バスターミナルに行ってくれ」という私の言葉に「6時のバスに乗るの?じゃ、急ごうねぇ」とのたまい、アクセルを踏み込む。いや、急がなくっても、あなたのその腕前なら十分間に合うと思うんですが…。話題をそらそうと「暑いですねぇ、毎日こんななの?」と聞くと、アクセルはそのまま、後ろを振り返り「毎日だよ!、6月から9月いっぱいずっとこうさ」というすばらしいお返事をいただく。ひえ〜っ。っていうより、前向いてね、おじさん。

 帰りのバスでは爆睡。気が付いたらセビージャだった。
 ホテルは旧市街のど真中。由緒ある建物で、高級ホテルだけあってフロントがしっかりしている。チェックインの時に、市内の地図や観光バスの案内、フラメンコのタブラオ(ショーを見せる店)案内をしてくれた。偶然にもタブラオは私がいきたいと思っていた『エル・アレナル』だったので、その場で予約してもらう。タブラオは夕食付きで59EURO。高いけれど、まあ、一度は行かないと。

 ショーは、早めの9時からの回にしたけれど、一応、日暮れてからの外出となる。旧市街だからできればタクシー利用のほうが良いのだろうが、フロントで歩いて2〜3分だと言われたので、歩いていく。ほとんど川に近いところに店はあった。それにしてもまだまだ暑い。

 店は狭い穴蔵のようで席は12卓くらい。ドイツ人らしき8人グループの他はすべて個人観光客。地元風の人は見られないが、まあ客層的には悪くない感じに思える。席は、正面真中よりちょっと奥のなかなか見やすいところ。食事はいくつかアンダルシア料理が並ぶ中から、ガスパチョと魚のソテーを注文する。暑くて、冷たいものとあっさりしたものが食べたくなってしまった。T嬢も同様だった模様。冷えたシェリーが注がれて、やがてステージが始まったが、まわりはカマレロが忙しく立ちまわっていて、なんだか落ち着かない。

 はじめにギターの男性2名とカンテ男女各1名の4人がステージに現れ、2名の若いダンサーが白い衣装で踊り始める。二人とも細身ですっきりした顔立ち。一人はヒターノ系、一人は北アフリカの血が入っていると思われるエキゾチックな美人。腕も、ふくらはぎも鍛えあげられて、それでいてしなやかで美しい。
 カンテ(歌)は、この店の売りである泣きの入った泥くさい感じで、すごく良い。あっという間にひきこまれてしまい、もう、あとは食事などろくに入らない。最初気になったカマレロも、視界の端に消えてしまった。

 次に現れたのはもうちょっとベテランの女性ダンサー2名。こちらは華やかな感じ。次は男性ダンサー。力強い手足の動きと、正確なステップに見惚れるも、前のドイツ人観光客が、笑いモノにしていて、カマレロに怒られたりちょっと興ざめ。まあ、笑う気持ちもわからないでもないけれど…。目の前に松崎しげるがやってきて、遠い目をしながら胸をはだけて足腰キメキメで踊ってるようなものだもの。でも、ちゃんと見てれば格好いいのに、すごいのに!

 先の女性ダンサーが4人組で出てきて一人ずつ踊った後は、土管のような腹と胸をゆらしながら、黒いシンプルなドレス…といえば聞こえは良いが、単なるアッパッパーともいえる服を身に付けたおばちゃんがステージに上がった。当然のことながら、歌は腹から絞りだす声で迫力があってすごい。で、このおばちゃん、ただの歌い手かと思ってたら、実はダンサーで、歌が終わったら踊り始めた。これが、まあ、なんというか、「フラメンコは体じゃなくて、魂で踊るんだ」と言われるとおり、ステージから踊りの心が伝わってくるようなダンス。靴音まで何もかもすばらしかった。

 最後は、ダンサーが入れ替わり立ち変わり出てきて、盛り上がって終わる。出口で、袖から戻ってきた若いダンサーとすれちがったので、「とても印象的だった」と伝えると顔をほころばせて「うれしい、ありがとう」と返してくれた。えへへ〜。

 あっという間の1時間30分。いわゆる「フラメンコ」のイメージを変えてくれる体験だった。やはり、本物を見なくちゃね〜と、思う。ただ、次に行くとしたら、絶対ドリンクのみにしよう。料理はおいしかったけど、ろくに食べる間もなかったから。

 余韻に浸りながら、部屋まで歩いて帰る。市内はまだまだ観光客が多く出ていて、11時でも宵のうちという感じで危険は感じなかった。ホテルの部屋は、赤系でまとめられた可愛い内装。通り側(スペインではこっちが良い)でバルコニーの付いた良い感じ。ただ…、最初冷えすぎていたエアコンが、途中から妙に効かなくなってちょいと困った。一応、少しは効いているのでフロント呼んで直してもらうのもな〜というレベルで、結局放置したのだけれど、2泊目などT嬢は暑くてあまり眠れなかった模様。

 寝る前に、屋上のプールを偵察に行くと、そこはBARになっていた。ライトアップされたカテドラルとヒラルダの塔を見ながら屋上で飲む酒は気持ち良さそうだったけど、明日に備えて就寝。


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