猫の足跡
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2003年09月10日(水) 怒りのスペイン入国

 5時起きして、シャルル・ド・ゴール空港へ。ここまでは順調。荷物のチェックインも無事完了…。ところが、いざ搭乗しようとすると、ボーディングパスとマニフェスト(確認書)を出せと言われ、一騒動。

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 昨日の夜、「明日はこのボーディングパスで乗れます。この確認書はマドリーの空港で次のセビージャ行き搭乗券を発行するのに必要ですからなくさないでください」って言われたよ、JALのにーちゃんに。なのになんで書類が必要なのさ?

 「絶対やだ、これは次のセビージャ行きのものだから。昨日、今日の分はAFに出した」と言っても、AFのスタッフは首を縦には振らないし、JALに電話して確認しろって言っても、「この電話は内線専用だからできない」っていうし。「半券に確認書不要のサインがしてあったはずだから、機械を開けて確認してくれ」って言ってもダメだし…。

 結局、数十分ゴネまくり、怒りまくった挙句、AFのスタッフに「俺がテレックス打って保証してやるから、このまま確認書を俺に渡してマドリーに行ってくれ」と言われ、泣く泣く従う。きっと、こんなにーちゃん個人の保証なんてクソの役にも立たないんだろうけど。そういう間にどんどん時間は過ぎていく。これじゃあ、次の便にも乗り遅れだわ〜。もう。マドリードの空港でJALのスタッフ吊るしあげて手続きさせるしかないなあ…。と怒りつつあきらめムード。怒っているから英語はろくに使えないし(時制とかめちゃくちゃ)。



 怒りも冷めやらず機内に乗りこんだら、スッチーのねぇちゃんが「大丈夫ですか?何か問題でも?」とおっしゃる。「ええ、山ほどの問題が!」と吐き捨てるように言う(単なるやつ当たりだなぁ)と、「私に何かできる?」と更にやさしい言葉を…。「何もないわ」と結局答えてしまったけど。ごめんね。

 この騒動のせいでマドリード到着も遅れ、次の乗り継ぎに間に合うか、ちょっと心配。だいたい、旅行の最初からなんでこんな思いしなきゃいけないのよ!プンプン!

 空港に着くと、驚くべきことにAFのスタッフが私たちを待っていた。エライ!

 「JALのスタッフに連絡してあります。AFのカウンターで電話ができますから直接話してください」と言ってカウンターまで案内されただけだったけど、ちょっとほっとした。日本語で当事者のJALと交渉できるのはうれしい。AFに文句つけても、彼らのせいじゃないから、どうしようもないし。

 で、JALマドリー支店と電話。担当者と話をするも、経緯を理解してもらうのに時間がかかる。しかも先方は正直、ちょっと足りない…。こういうトラブルがあったら、私なら先にフランスの支店と連絡をとって、事実関係を抑えておくけどなぁ。何度も同じ話をさせられた上、「これからパリに連絡を取って、このあとどうするか検討しますから」などと言われ、ちょいと意識的に切れてみる…が 結局、予定していたセビージャ行きの便には乗れず、次の便になる。ひどいっ!

 セビージャ行きの書類を手配するのに、空港に担当者がいないんだそうで(怒)そのまま待機させられる。「こういうことになって、私たちの旅程はめちゃくちゃです。ホテルや鉄道の予約キャンセル分、その後の遅れを取り戻すためのタクシー代などの補償をお願いしたいので、責任者の方にきていただけるんでしょうね」と切れ気味に伝えたのだけど、やって来たマネジャーとやらがこれまた酷かった…。

 「私では、なんともお約束ができません。そもそも、私はまだ出勤時間前なんですよ、会社にも出ていないのに電話だけでかけつけて、何も分かる訳ないじゃないですか!」と逆切れしやがった。この女。

 あなたの出勤時間って、私たちに関係があるのかしら?会社の代表として出てきたんだったら、そういう個人の事情を持ちだすって、決してしてはいけないことなのではないのかしら?トラブル対応に名刺も日本での対応連絡先も準備してこないって何事?ホントにマネジャーなのか??こんなのが?

 結果、時間もないし、帰国便のときにパリでお話を…とかいう「パリ支店に丸投げ」になって、次の便でマドリー発。荷物は先の便で出てしまっているので取り置いてもらうようにしたけれど、多分どっか行ってるんだろうなぁ。無事だといいなぁ。

 午後2時。セビージャに到着。予想したとおり、荷物はナシ!ロストバゲージの窓口に行くと、「IB(イベリア航空)の窓口は隣よ」と言われる。でも、お隣の窓口は閉まっているんだけど…。

 半分やけで窓をガンガン叩くと、中からお姉さんが顔を出してくれた。「no sale mi equipage.
荷物が出てこないんですが」というか言わないかのうちに、目に飛び込む私たちのトランク。あった!と喜び、「puedo llaver mi equipage? 持ってっていい?」と聞くと、笑顔で「vale!(OK)」の返事で別の人とおしゃべり。おいおい、確認しないのかよ…。スペイン的だなあ。そして、鍵がついていないポケットが、しっかりと全部ファスナー開けっぱなしになっているのも、すげー、スペイン的だ。そんなところに大事なもの入れるかっ!!ボケッ!

 それにしても、トラブルはエネルギーを使う。いいかげん疲れたので、T嬢に頼んでタクシーでそのままカルモナのパラドールに向かうことにしてしまった。贅沢だけど。

 高速道路をタクシーは150キロ近くで爆走。運転手は無口なお兄さん。約30キロの距離なのに、15分ほどでカルモナに到着。街に着くと「ここがカルモナだよ aqui es carmona 」と教えてくれ、更に、パラドール近くの眺めの良い場所で騒いでいると、「te quieres ver aqui? 降りて見たい?」と停まってくれるあたりはなかなかいい人なのかも。

 カルモナの街は、白い壁で狭い坂道。そこを上がって開けた山の上に、あの、ドン・ペドロ王の居城が
パラドールとなって私たちを待っていた。

 石造りの堅固な城。部屋は駐車場に面してはいるものの、窓枠やベッドカバーが凝った内装。さすがにそこそこいい値段を出しているだけに、バスルームもアメニティも充実…と思いきや、シャンプーがない。あれ?そういえば、こっちって、シャンプーとバスジェルが一緒だったかも。部屋のセーフティボックスの鍵が、クレジットカードの磁気を通す仕組みで、カードを金庫に入れることができないってのはどうかと思ったけれど、スペイン人にとって、カードって貴重品じゃないのかね?

 とりあえず、少しくつろいだ後で街を散歩することに決め、プールへ。移動ばかりだったので運動不足をなんとかしたいし。プールは、城の1Fからちょっと庭を降りたところにあった。途中のあずまやもなかなか素敵で、ここで休憩するのもいいなあ、と思う。日差しはじりじりと猛烈だけれど、風が通る日陰では
とても快適に過ごせるのではないだろうか?

 あずまやから外を見ると、アンダルシアの青い青い空の下に、乾いた土地がどこまでも広がっている。地平線、ってこういうのをいうんだ…。と息を呑むような眺めだ。中世の王様は、こうやって我が領土を眺めたんだろうか?

 プールの水はとても冷たくて、足がつりそうになるけれど気持ちがいい。しばらく泳いではデッキで体を乾かし、日陰で休む…を繰り返す。本当に日差しが強いので、肌が焼けるようだ。
私はもともと陽を浴びるのが大好きだが、最近はできるだけ焼かないようにしている(だって、焼けた後がしわしわかさかさのET肌になるんだもん、年齢には勝てないわ)。今回も日焼けチェックのために指輪をしているのだが、これはキケンかも!同行のT嬢に、「私が馬鹿な日焼け行動に出ていたら注意してね〜」とお願いし、苦笑(というより、さんざんバカに)される。

 プールでは、T嬢が惜しげもなく披露したナイスバディが注目の的だった。いや〜、カップルで来ている人ばかりだったけど、間違いなく全員がT嬢に「おおおっ!」という熱い視線を浴びせていた。

 いや〜、すごいよ、カンクンで買った『ナイスバディTシャツ』の威力は!!そして、それをここぞとばかりに着こなしてしまうT嬢の勇気(?)には脱帽。

 750Mほど軽く泳いでプール終了。帰りにあずまやでくつろいでいると、黒い中猫(子猫と親猫の中間)が寄ってきた。かまって欲しくてそばに来るくせに、可愛がろうとすると逃げる、で、あきらめるとまた近くを走り抜けてちょっかいを出す…。う〜ん、人なつこい野良の典型だわっ!う〜〜かわいいっ。
逃げたそうにしながらも結構素直にT嬢に抱かれているところもまた可愛い。草むらに潜んで遊びたがっているので、素手で遊んだら、小さい傷をいっぱい作ってしまった。そういえば、抱いてたT嬢はノミに食いつかれていないだろうかとちょっと心配になる。

 午後5時半すぎ。まだまだ日差しは暴力的だけど街に向かう。まだシエスタなのか、街には人の気配がまるでない。人気のない白い壁の狭い道をくねくねと進むのは、ちょっと不安でおもしろい。古い街だけあって教会がたくさんあるけれど、ちゃんとした観光地ではない田舎なので街の案内もなく、何がなんだかわからない。スペイン語も辞書ナシで全部訳せるわけじゃないし。ごめんよ〜T嬢。

 そんななか、妙に子供がぞろぞろと出てきて、ある場所に向かって行く。なんだろうと思って付いて行くと、そこは教会でみんなで楽しそうに歌を歌っていた。歌のお姉さんみたいな人が、ギターを弾いて、すごく楽しそうだ。よく分からなかったけれど、教会のお祭り週間にあたっていて、そのイベントの一環のようだった。

 教会を出て、ちょいと買い物をしてバス停を探したりした後、広場に向かう。広場には特設舞台が設置されていて、準備が始まっていた。広場には先ほどの教会で歌を歌っていた子供達だろうか?大勢の子供がいて、お子様チェス大会なども行われていた。各自がチェス盤の前で先生を待ち、先生が一手ずつ指して回る方式だ。みんな、真剣な顔つきで駒を動かしている。男の子ばっかりの中で、メガネをかけたちょっと頭の良さそうな女の子が一人がんばってて、なかなか微笑ましい。

 広場の端っこにあるBARのテラス席でビールとワインを飲む。結局結構歩いたので、冷たいものが美味しい。広場に次々とやってくる人達を見ながら、T嬢に「スペイン人の体型は“いやん、ばかん、どかん”だ」という自説を実例ベースに展開し、おおむね了承を得た。本当にこっちの人はなぁ…。子供のうちから、腹とケツのボリュームがぜんぜん違うし、ティーンの女の子も惜しげも無くローライズのジーンズからむちむちの腹をはみださせて、堂々と「あたしって、セクシーでしょ」って顔しているし。奥様達は、何を言わんや…。

 私たちがそんな話をしているとは知る術もないであろう子供達は、広場で楽しそうに遊んでいる。特設舞台でちょっと前座音楽が流れるだけで、たわわな腰を振って踊る小学生たちって…かわいらしすぎる。T嬢は、テラスにいた小学生の一人から声かけられてたのが、これまた微笑ましい。

 約20時。日暮れも近くなってきたので、夕食をとりにパラドールに戻る。レストランの入り口テラスから、ちょうど夕陽が沈む光景を見ることができた。すごいよ〜、もし、これ以上に感動することがあるとしたら、それは、太平洋のど真ん中に浮かぶ船の上で見る夕陽とか、サバンナで象の群れを背景にした夕陽を見るとか、南極、サハラ砂漠、エベレストの頂上で見る夕陽とかしかないと思う(あ、けっこうあるなぁ…笑)。

 案内された夕食の席は、一番奥の良い席だった。でも、あまりに良い席で、カップル向けの横座りって…。一瞬、「hay una otra mesa? 別の席ない?」って聞きたくなった。まあ、かなりにぎわってたから、仕方なく、そこに座ったけど、う〜むむむ。いや、私たち、ラブラブだけどさ…。恥ずかしいじゃん。

 夕食は、まあまあ、ってとこかしら。くたびれてたからワインをハーフにしたけど、結局足りなくて降るボトル頼んでいい気分になっちゃったのって、どうなのかしら? T嬢は肉のでかさにかなり困ってたけど。それにしても、こっちの人は、あんだけ食べて、ポストレ(デザート)はブッフェだからねぇ…。胴体の太さで負けるわけだわ(決して勝ちたいとは思いませんが)。我がアイマール君も、こんな甘いもん毎食食べてるのかしら?スペインに移籍してから急に首と胴がたくましくなったのは、ポストレのせいじゃないと言ってくれ〜!お願いだから、将来、マラドーナのようにはならないでくれ…(とはいえ、落ちぶれても現在の姿がどんなになってるか、日本にまで知れ渡るマラドーナってやっぱり偉大だけどさ)。

 で、ワインも飲んで、スペイン流ごはんをたくさん食べて、「食事が終わったらもう一度街に出て、特設舞台の行く末を見よう」って行ってたのはどこへやら、あえなく轟沈。通常はT嬢よりも先に私が「ぶ〜ん」とベッドに倒れこむのだけれど今日は珍しく同時。明日からは、順調な日々になりそうな予感。


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