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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2004年07月15日(木)
Vol.495 捨て猫

おはようございます。りょうちんです。

バイトくんに急かされて店の裏に行くと、そこには小さな仔猫がいた。どうやら捨て猫らしい。毛並みも汚れた痩せ細ったカラダで、つぶらな瞳だけがまっすぐにこっちを見ていた。俺らが近づくと本能なのか、金網に寄り添った小さなカラダを激しく震わせ威嚇する姿勢を見せたが、さっと身を翻してどこかへ逃げてしまった。「こんなところに猫を捨てるなんてひどい!」とバイトくんは憤慨していたが、その意見に俺もまったく同感だった。
それから1週間。猫の姿を見ることもなく、捨て猫の存在自体忘れかけていたのだが。先日、再び店の裏であの日の猫を目撃した。炎天下の暑さにも叩きつける夕立にも耐えた捨て猫は、この1週間で少しだけ逞しくなったようにも見えたが、相変わらず痩せ細ったカラダと汚れた毛並みはそのままだった。もしかしたらこのあたりに住み着いてしまっているのかもしれない。どこか近くに、この猫の寝床があるのだろうか。かわいそうなのは山々だが、それはとても困る。店のゴミを漁られる可能性もあるし、衛生的にもよろしくない。本当はココロある人に拾われて幸せに育ててもらえればそれがいちばん良いのかもしれないが、あいにく俺も店で働くバイトくんたちも不可能な話だ。このままほっとけばどんどん野良猫になって、悪さすれば近所の人がいつ市や保健所へと処分の要請するかわからない。
意を決して俺は、おびき寄せてやっとのことで捕まえた小さな猫をダンボールに入れ、少し離れた林へと車を出してそこで逃がしてやった。ダンボールを開けると猫は勢い良く飛び出して、夏草の中に消えていった。なんだかとても後ろめたい気分だったが、俺がこの猫にできるのはこれくらいだと自分のココロに言い聞かせた。
翌日。店に行って俺は驚いた。昨日遠くへ逃がしてやった猫が、そこにいたのだ。帰巣本能だろうか、俺を見かけると猫はあわてて逃げていったが、確かにあれはあの猫に違いない。問題は何も解決していないけれど、底知れない野生の力強さを秘めた小さな命が逞しく生き続けているのを知って、この猫にエールを贈った。