探偵さんの日常
DiaryINDEX|past|will
やがて千紗さんのデート相手は、依頼者であるF氏の三男、隆志であることが、現地の部下によって判明した。千紗さんへのボディガードは夜12時までだったため、我々は事務所に戻り、翌日からのガード体制を整えることにした。
事務所では隆志を調べた部下が先に戻っていた。
「どういうことなんですかね。聞き込みなどはしませんでしたが、撮った顔写真はFさんにそっくりじゃないですか。」
私は、通常は依頼者が誰であるかは部下に言わないが、今回のケースで何かあったときのために、部下には概要をすべて話しておいた。もし、依頼自体が秘密であったとしても、秘密は多人数が知れば秘密ではなくなるからだ。今思えば、少し私が神経質すぎたのかもしれないが、そのくらいの気を使わないと、この世界でやって行くのは難しい。
翌日のボディガードは、私自身はガードに参加しないことにした。ただ、私は居場所の把握だけは行い、万が一に備えてガードには元警察官で逮捕術上級の永田をリーダーにつけることにした。
翌日、千紗さんは勤務先の会社に向かい、夕方までそのまま、という、離れて行うボディガードとしては非常につらい状況になった。社内で非常事態が起こっても、私たちは気づきにくい。
そんな私たちの心配をよそに、千紗さんは夕方5時半に会社を出た。近くの路上で人待ちの様子。永田をはじめとしたガードチームは2台の車と2台のバイクに分かれて待機しており、万全の状態だ。
と、そこにちょっと古ぼけたベンツが現れた。なんと、運転しているのは隆志であ る。昨日デートしたばかりで、今日も会社が終わり次第会うとは、関係はよほど深いのだろうか。当時の部下の記録によれば、『幸せそうな2人を見ていると、本当に別れさせる工作などしてもよいのか、と思いました』とある。私は当時、この報告を読んで、千紗さんと隆志さん、お互いに傷がつかずに別れさせるにはどうしたらよいか、悩んだ記憶がある。
一方、私はFさんに面会、というか顛末を聞くため、帝国ホテルのロビーで彼を待っていた。いつもと変わらぬ人の多さであったが、Fさんは時間通りに現れた。
Fさん自らの案内で、帝国ホテルの一室に入る。今度は普通の部屋だった。
部屋に入るなり、私が会話の口火を切る。
「隆志さんと千紗さんの関係は、Fさんのほうがお詳しいのでは・・・」
Fさんは
「迷っている」
とつぶやいたまま、じっとしている。沈黙が部屋全体に広がったころ、Fさんが口を開いた。
「あの二人は、兄弟なんだよ」。
2人とも私の子供だ。1回紹介したら付き合うようになってしまって,,,,,
だが,お互いに兄弟だとは知らない。だから迷っているんだ。
結婚させるわけにはいかないからな。
つづく。
|