探偵さんの日常
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「あの2人は、兄弟なんだよ。いや、たぶん兄弟だ、というべきか。隆志は、ご存知のとおり私の子供。ただ、千紗の母親というは、私の同級生で昔は銀座でママをしていた女性なんだよ。私はかつてその女性と関係があった。時期的に見てもほぼ、間違いないといえるんだが、その女性・・・千紗の母親はすでに亡くなっていてね。DNA鑑定でもするしか確認するすべはない。だから、2人を別れさせようとしているんだ。」
静かに、そして力強く語るFさんは、過去の郷愁にひたっているようであった。鬼経営者といわれ、一代でこれだけのサラ金・・・いや、今は消費者金融といわなければいけないらしいが、それを築き上げた男にとっては、過去を懐かしむことが彼にとっての癒しなのだろうか。
私は、クライアントであるFさんに、言葉を選んで慎重に言った。
「もちろん、Fさんのお考えになっていることはわかります。ただ、そのことは隆志さんとよく話し合ったほうがよいのではないでしょうか・・・。差し支えなければでかまいませんが、千紗さんのボディガードを私たちに依頼された理由など、お聞かせ願えますか?」
「ああ、それか・・・ちょうど2週間前だろうか。私と千紗の母親についての妙な噂が社内の一部で出回ったらしいのだ。らしい、というのは、私の秘書が社内で嗅ぎつけただけで、証拠は何もない。ただ、そのあとに『お尋ね』という内容の手紙が私宛に届いたんだ。差出人も何も書かれてない手紙だ。それに書かれていたのは『あなたの隠し子は泣いています』と1行だけ。それで千紗の身が気になり、最初はボディガードは秘書にやらせていたんだが、みな体力がなくてな。それでパーティーで君と名刺交換したことを思い出し、電話した、というわけだ。まぁ隆志も心配だが、奴は空手3段だしな。たぶん平気だ。」
早めに聞いておいてよかった。一見さほど心配のない事柄のようでも、そのちょっとしたきっかけで人生なんて変わるものだ。
そんな時、電話がかかってきた。
「千紗さんが襲われました。ただし怪我はありません。当方負傷2名ですっ!」
つづく。
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