探偵さんの日常
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2002年10月05日(土) 緊迫の海 〜ムーンライトダンス(4)






東京へ戻ったわれわれは、一度別れ、それぞれの準備をすませることになった。


2週間ぶりに事務所に顔を出すと、そこには書類や伝言が山のようにたまっていた。
私は書類の束にざっと目を通す。中には堺に頼んだ議員の尾行報告もあった。


当時はすでに第一線のスパイからは身を引いていたため、伝言の多くは依頼者や調査
がもとで知り合った政財界の方だったが、仕事のほうは部下がうまく処理をしてくれ
ていた。余談だが、このころは非常に優秀な部下に恵まれていたと思う。


私は電話機をたぐり寄せ、堺に電話をかける。ワンコールで堺が出る。私が言うより
先に堺がしゃべった。

「アッ、お疲れ様です。昨日分までの報告書はお届けしておきましたが。。。」


「報告書の中で一点気になるところがあってね。この3日前の新潟出張の際に会った
人物の写真をくれないか。」
私は、してやったり、と思った。この議員が新潟で会っていた人物の中に、薬物密輸
の日本側関係者とされる暴力団組織の幹部の姿を発見したからである。この暴力団組
織は、業界でも有名な組織の一派で、シノギに薬物を多く扱うことでも有名だった。


写真は1時間で届けられた。議員と暴力団が鮮明に写っている。ほんの一瞬の出来事
だったようだが、一流探偵の堺はその瞬間を逃さなかったようだ。



さらに2時間後、私と田所警部補は車で新潟へ向かっていた。堺の写真は出かける前
に田所と一緒に現れた田所の上司に渡していた。


ひたすら関越高速を飛ばす。田所が乗ってきたBMWのボディは200キロを超える
走行でも私たちに不安を与えない。ハンドルは田所が握り、私は助手席でうとうとし
ていた。


「明後日、松尾の死体の件は発表する。犯人の逮捕、という形でだ。これで完璧にあ
んたの容疑は晴れる」

群馬を越えたあたりで目がさめた私を見て、田所が言った。表ざたにならなかったと
はいえ、麻薬密売の容疑がかかっていたというのは気分が悪い。田所がいなければ私
は冤罪に巻き込まれるところだった。


「いろいろお世話になりました」
別に礼を言う必要はないのだが、そこは我慢して言っておく。田所は、

「まぁ、これが解決したら俺も出向するから、そのときおごってくれ」


と真顔で言った。私は今まで、他の刑事にたかられた(職務上知り合った警察官は飲
みに行くと金を払わない!)こともあり、嫌な思いをしたこともあるが、田所に対し
ては心からご馳走しよう、と心に決めた。同じ目的に対して戦っているから、私の心
にも妙な連帯感のようなものが浮かんでくる。


やがて新潟県の某所にたどりついた。そこは港ではなかったが、私たちは車に積んで
いたボートで沖合いへ出た。沖には巡視船が停泊している。


「これじゃまるで、北朝鮮の工作員だ」
チッ!と舌打ちをしながらつぶやく田所だったが、その顔は、「これから任務を遂行
する男」の顔だった。



巡視艇はわれわれを発見すると、素早くブリッジに私たちを引き上げた。何も聞くな
と言われているのか、海上保安官の制服を着た男たちは私たちに何もしゃべらない。

「お待ちしておりました」


身長は180センチを超えているだろう男が船内から現れた。お互いに身分を尋ねる
ようなことはしない。正確に言えば、田所と男は互いに素性を知っていたようだが、
私はあえて聞かなかった。第一、自分の疑惑が晴れた段階で余計なことに首を突っ込
んでいること自体が無謀なのだから。


私が無謀にも田所について来たのは、北海道を含む一連の捜査段階で、私の恩師とも
いえるある議員がこの事件に間接的に関与・・・というか、知っていて見逃していた
気配があったからである。私は恩師がそんな政治のやり方をするわけはない、と信じ
ていた。信じているからこそ、ここまで来た。


満月の光が漆黒の闇を少しだけ、明るくしてくれる。巡視船は全ての明かりを消し、
全速力で沖合いへ向かう。


「今から一つ、働いてもらう」

田所はそう言うと、私を船室へ案内する。

「防衛庁の早見です」


大男が突然自己紹介をする。私が簡単に挨拶をすると、早見は私に防弾チョッキを手
渡してこう言った。


「お噂は田所さんから聞いております。この船は、ご覧のとおり海保の巡視艇です
が、今この瞬間は日本船籍ではありません。本任務は秘匿であり、公式の記録には残
りません。 そこのところだけご理解下さい」


・・・死んでも内密に処理されるということだ。私が扱った案件の中でも最高レベル
のこの危険任務に、私の体の血は沸き踊った。手がブルブル震える。頭では怖いと
思っていなくても、体はこれから始まる未知の経験を察して反応しているのだろう
か。


「もうすぐ密輸船が見える。俺たちは中で活動を行う。実は今回、薬物とは別に、北
朝鮮の関係者が別件で密入国するとの情報があるんだ。われわれはそれを阻止し、そ
して密輸の証拠を掴むのが目的だ。但し逮捕などの司法警察活動は行わない。あくま
でも証拠を掴んだ上で追い返すだけだ。あんたにも手伝って欲しい。探しもの、得意
だろ?」


私はさらに緊張したが、もう後戻りできるような状況じゃない。



30分後、われわれを乗せた巡視船は沖合いに停泊するイカ釣り漁船に近づいた。漁
船は逃走する気配はない。こんな状況も予期しているのだろうか。
巡視船が近づく。船には、日本人の船長と、船員2名の姿があるが、漁をしている気
配はない。臨検を名目に海上保安官、田所、早見、私の順で乗り込む。抵抗の気配も
無く、船長と船員は


「ご苦労様です」
と笑顔で応対する。


「船に乗っているのは3人ですか」

海上保安官が尋ねる。頷く船長。



と、ここで突然、保安官、早見、田所の3人が船員の身柄を拘束する。揺れる船の上
でも素早い制圧だ。


「ブツと人を探すんだ」


田所、早見、そして私の3人は、船内の創作を始めた。他の海上保安官が乗り込んで
きて、手錠をかけられた3人を見張る。



早見が、ブツを見つけた。簡単に見積もっても覚醒剤が数百キロはある。

私はそのとき、船の後部に不自然なフック跡を見つけていた。




案の定,そこには隠し部屋になっている。

中には,イキのいいのが人,偉そうなのが1人釣れた。

ただ,私は負傷してしまうのだが。。。。






つづく。






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