探偵さんの日常
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2002年09月26日(木) ディズニーランドでデート 〜国際手配の女(2)







「私、殺されるかもしれないんです」




運転中の私は、キムさんの言った言葉を理解するのに若干の時間を必要とした。



当然、警護対象者のことを詮索してはいけないのだが、このときばかりはそんな掟は無視しよう、と思った。どうしてそう思ったのか、といわれればもう説明できないが、あえて言うなら、私の中の直感のようなものが、危険信号を灯した、とでもいうべきか。


依頼者からは、「24時間のボディーガード」としか聞いていない。特に危険なことはない、とは伝えられている。ただ、その24時間は彼女の行きたいところへついていってもらいたい、とのことだった。ただし、一応任務はボディーガードであるから、ある程度の事情は把握する必要がある。



ただ、そのときは、「すいません。もう一度お願いできますか?」

と聞き返すだけにとどめておいた。とぼけてみるのもひとつの手である。

「いえ、なんでもないです。」

彼女は引きつった微笑をバックミラー越しに私に向けていた。




やがて車は東京ディズニーランドへと近づいた。シンデレラ城が視界に入ってくる。私はアクセルを緩め、キャデラックのブレーキをやさしく踏み込んだ。



「さぁキムさん、ここがディズニーランドです。」


後部ドアを開ける。もちろん、ガード中であるから気を抜くことはできない。


とふと、私は視線を感じたような気がした。気づかれないように回りを観察するが、周りに不審な気配はない。どうやら気のせいのようだ。


ディズニーランドでは、彼女は子供のように楽しんでいた。アトラクションを乗り進むたびに、彼女の仮面が取り払われていく・・・そんな気がした。


「次は、東京タワーに連れて行って。」


突然彼女は、私の左腕を取って走り出そうとしたそのとき、偶然振り向いた先にまたもや強い視線を感じた。男女のカップル。偽装してはいるが、高度に訓練されたものの目つきをしている。


「とんでもない警護になるかも知れないな」なぜか、興奮で体がゾクゾクした。



残り、18時間。


駐車場のキャデラックに戻ると,車内を物色した跡があった。
プロの仕業と見て間違いなかった。


つづく。


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